イタリアから。ピンク・フロイドをローストしたような呪術的ジャム・セッション。地中海に隆起した砂丘。クラウト・ファンクというかドローン・ファンクというか。
◎Horzes/It’s About Apples
各自、別名義でも活動するTobias SchmittとDaniel Voigtによるデュオ。定番の電子インプロヴィゼーションでノイズ~ドローン~アンビエントを塗り重ね。または武満徹の怪奇映画音楽をデシタイズ?デジタライズ?したようなホラーなムードも。
ペンシルベニアの宅録ガレージ・シンガー・ロッカー。有り体に言えば初期のベック、あるいはWavvesやTy Seagullにも通じる放埓さ。THE・ローファイな試行錯誤が、懐かしくも微笑ましくもあり。
Sublime Frequenciesからのアンソロジーも記憶に新しい、ガールズ・サイケ・ガレージ・バンド。インドネシアのロネッツ? いや、まさか。ピーナッツとかゴーゴー~GS歌謡に近い、ユルくてハクい、いなたさが愛らしい。
◎Yohuna/Revery
ハタチのJohanne Swansonによるドリーム・ポップ・プロジェクト。流行りのシャーベット・カラー・シンセ・シューゲイズ。元Sleep ∞ Overが始めたBoy Friendとかヴィヴィアン・ガールズが好きな人はマスト。女子=宅録の親和性には男子のそれ以上にリアリティを感じるところが多い。ガールズ・ジンとか見てるとそう思います。
◎Wanda Group/Bass Urine
ソロともカルテットとも囁かれるロンドンのプロジェクト。
執拗なる具体音のコラージュ。愛嬌のないエリック・コープランドか。
シカゴのNeon Blossom Recordsからリリースの本名Sarah Lipstateというブルックリンの女性音楽家。なんとグレン・ブランカやライス・チャタムのギター楽団にも参加した強者で、映像作家としての顔も。鍵盤も鳴る典雅なアンビエントあり、ギター・ノイズを重ねたヒプノティックなループあり。ジェシカ・ライアンとの共演観たい。
◎Father Sound/Harpoon Pole Vault/Split
新興カセットレーベルGift Tapesから。前者はクラスターの意匠を継ぐレトロ未来なシンセ・アンビエント、対する後者は辺境節のマダラ模様なドローン・サイケ。どこを始点に聴き進めるかで作品全体の印象も変わるだろう、か?
◎Nachtbote/Nachtbote
SF Broadcastsから、身元(今のところ)不詳の電子音楽家。まるで太陽のフレア運動をシンセのゆらぎで模写デジタル化したようなニューエイジ・サイケ。今こそ私達は喜多郎を再聴・再評価すべき時かもしれない…
NNFからもリリースするミネアポリスの3人組。クラウト・ロックを滋養にアンビエントやダブ、アシッド・フォークからトライバルまで通過した、まあ、らしいといえばらしいセンス。しかしこの界隈の“総合商社”といえばやはりジャッキーOマザーファッカーなのだなあ、とあらためて。
◎Reedbeds/Swells On High
典雅、という形容も似合いそうな、慎ましくウォーミーなギター・ループが紡ぐアンビエント。ご存知、Motion Sickness Of Time Travelことレイチェル・エヴァンス の旦那グラント・エヴァンスakaNova Scotian Armsが運営するHooker Visionから。
◎Dolphins Into The Future/Plays Themes From Voyage
ジェームズ・フェラーロとも組むベルギー人Lieven Martensによるアンビエント・プロジェクト。海洋環境音&電子音を浮力にぷかぷかもあもあと漂うニューエイジ・ソノリティーはまさにNational Geographicの世界。無重力というより無気力感さえも。
ドイツ人作家Jens Paulyによるアンビエント・プロジェクト。Digitalisからもリリースする新手?で、同名のアメコミとは全く無関係の、ケレン味なきスクウェアなシンセ交響曲。
片割れはEmeraldsのジョン・エリオット。アナログ・シンセのコズミックなうねり、クラウト・ロック経由のメディテーションとは趣の異なる、やや大仰なオーケストレーションが魅せ場か。エモーショナルだがドリーミーというよりシネマティックで、内向性は皆無。またEmeraldsの近作とは異なり、アンビエントとチルウェイヴの相関性~順接関係に楔を打つ。
◎Softlight Reveries/Softlight Reveries
Thoughts On Air名義でもお馴染みのScott Johnsonによるプロジェクト。ビンテージのテープレコーダーで録音されたという、粗目のアンビエンス。一般的にエレクトロニック・ミュージックというものが機材の開発やテクノロジーの成長と共に変化・進展してきたとするなら、これは興味深い、一種の退行現象的な試みなのかもしれない。
カナダのエセ伊達男Bernardino Femminielli。DigitalisやHobo Cultからのリリース履歴が信じ難い、大マジな80sシンセ・ディスコ。例えば100%silk!が展開するアンビエント~ディスコ~ニューロマ/イタロの流れ・連続性とどう結ばれるのか、はたまた別物なのか、興味深いところかもしれない。
◎Digital Leather/Sponge
Fat Possumらしいというか、ジェイ・リタードとも交遊があったとかどうとか。玉石混交の2000年代ローファイ再興市場からフックアップされた4人組。2000年代ローファイ~シンセ・パンクを通過したガイデッド・バイ・ヴォイセズ――的な小気味よいフックが魅力。
◎Universal Studios Florida/Oceans Sunbirds
シアトルのデュオ。アニコレ以降のUSサイケ・ポップやシューゲイズ、トライバルからエレクトロニカやチルウェイヴまで。2000〜2010年代におけるUSインディーの命脈を網羅・圧縮した、若干早過ぎたサンプルかも。ファック・ボタンズがスペースマウンテンならコチラはスプラッシュマウンテン。フローティングでブリージン。
◎TRANSMUTEO/CYMAGLYPHS
「ニューエイジ」と「レトロフューチャー」。本来の語義的には相反するものなのでしょうが、そう考えるとこのデジタルテクノロジーの飽食の時代にカセットでリリースされるというのも、まあ奇妙な現象であるのかもしれない。エレクトロニクスと環境音がまったりと編まれた、“ゆらぎ”のインナーミュージック。
◎Air Sign/Our Galactic Covered Wagons to the Stars
ビンテージなプログレからシンセ・ディスコ、ニューエイジからバレアリックまで、意外や手数豊富に畳み込まれたきわめて今日的な電子音楽の一例。パイプオルガンやバグパイプのように鳴る管楽的なオーケストレーションは重厚感も。
現代エレクトロニック・ミュージックが提示するスタイル、あるいはそこに開ける「ゾーン」。多様にして、しかし反面、ジャンルとしての固定化=強化を促すある種の閉鎖性が、この界隈の多作ぶりを担保しているような気も。質が量を支えているのか、それとも量が質を支えているのか、まあよかれあしかれ……。フィラデルフィアのChris Madakによるプロジェクト。
◎Brother Raven/Timewinder
Jamie PotterとJason E Andersonの2人によるアンビエント・プロジェクト。起伏の乏しい、というか陰影の薄いたおやかなシンセ・ミュージック。電子音楽作家はカセットテープというオールドメディアに何を見ているのか。スキップが容易な他のメディアと異なり、スキップ不可=丸々の音楽聴取を半ば強いる、その体験性にひとつの醍醐味があるのは間違いないとしても……。
◎The Garment District:/Melody Elder
The Ladybug Transistorの創始メンバーによる、みずみずしく、愉しき箱庭音楽。レーベル色のアングラ感はなく、90年代アセンズ~エレファント6周辺も彷彿させるローファイ/初期エレクトロニカの牧歌性&アマチュアリズムは、前身たる出自が物語る通り。あるいはツジコノリコの初期作にも通じるドーリーな少女趣味に思わずほころぶ。元Television Personalities/Swell MapsのJowe Headが一曲ベースを弾いている。
ポスト311の、“想定外”という圏内を歌った…… ジャパニーズ・フォーク/サイケデリック・ロック。
◎TRANSCENDENTAL RODEO/vol 1
マット・ヴァレンタイン + エリカ・エルダーに参加する……と経歴を知り納得。バンジョーやハーブを交えながら奏でられる、美しく瞑想的なアコースティック。
◎Iasos/Jeweled Space
ギリシャ出身のパイオニア。拠点は米西海岸だがヒッピー臭いニューエイジとは画した、天上から降り注ぐスターライト・アンビエント。
◎Predator Vision/Ⅱ
リアル・エステイトのEtienne DugayやMatt Mondanile (ダックテイルズ)も参加するサイケデリック・ジャム・プロジェクト。いわゆるクラウト・ロック・マナーだが、空間系のギター・エフェクトはさもありなん、という感じか。
◎Piotr Kurek/Heat
名門Digitalisから。ワルシャワ出身のアンビエント/ドローン・エクスペリメンタル。オルガンやモジュラーシンセ、フェンダーローズや多彩な音色を操り、霊妙で儀式的なセッションを提示する。ほのかなオリエンタリズムは東欧由来なのか、はたまた雅楽風の典雅な趣さえ漂わす。エキセントリックなヴォイス・パフォーマンス、ダンサブルな展開も。
◎Neon Tongues/Big Kids
早い話がプレ・クラウド・ナッシングス。ディラン・バルディによる初期の数多ある?ローファイ・ガレージ・プロジェクトのひとつで、ベッドルーム・ミュージックらしい仕掛けもチャームポイント。アルビニ以降の現在とはかけ離れた音だが、天性のメロディー・メイカーとしての閃きは感じられる。
◎Heated Void/Mirror Cubes
Julian&JosephのGulyas兄弟によるアンビエント/ドローン・デュオ。モコモコとうねる視界不良の電磁層。モールス信号のようなパルス音が深みへ、深みへと誘う。
◎Lussuria/Silk and Honey
ゴシックというかホラー、恐怖というより悪夢的なドゥーム・インダストリアル・デュオ。スカムなジャケが何をか言わんや……
(※2012年1月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)
(※2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))
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