2012年7月3日火曜日

2012年7月のカセット・レヴュー(随時更新予定)



◎/please//ST
リタ・アッカーマンも思わせるジャケのポートレート(本人?)に惹かれたEllen Davies嬢(女性だよね?)のドリーム・ポップ・プロジェクト。ショアーなアコギの響きと、レイヤード・シンセのめくるめくブリージネス。ドリーム・ポップ+チルウェイヴ=ドリーム・ウェイヴというのも安易だが頷ける心地よさ。ブツはMagic Rub CassettesだがBandcampを仕切るSewage TAPESは要注目。新作の『Daydreams always seem​.​.​.』ってタイトルもいいな。


◎Rags/ST
これがデビュー盤(デモ音源?)になるサタニックなブラック・メタル・プロジェクト。といっても本域というよりは、たとえばリタジーやミック・バー周辺に近いブルックリンの新感覚なメタル風。ミニマルなリフの構築はマス寄りというか。スペイン発ということで意外というかどんなシーンなんだろう?と興味がわく。


◎rale/The Moon Regarded, And The Bright One Sought
南カリフォルニアのドローン作家。イーノ『Another Green World』の暗黒ヴァージョン。合わせ鏡のようなA/B面。果ての見えない無間の景色を広げる。



◎Polluted Water/Nature Man  Woman
Hobo CubesもリリースするGoldTimersTapesから、シカゴのアンビエント作家。「汚/穢水」とは絶妙なネーミングだが、ケミカルウォッシュされたシンセの海原をドリフトするようなA面、対してB面では深海にもぐり水圧のなかまんじりと息を潜めるかのごとく重苦しいドローン。


◎Polymer Slug/Simple Displays Control
digitalisの限定ラインからリリース。シカゴに拠点を置くAdam Tramposhのソロ。模範的なシンセ・アンビエントといった感じだが、かたや(?)Dolphins into the Futureのアンビエントが深海の暖流ならPolymer Slugはまるで湖水の朝靄を思わせる。奇矯なコラージュのジャケとは裏腹に耳当たりは上品。



◎Animal Collective/Keep
スニーカーブランドとコラボした付録カセット。各メンバーのソロ名義の曲を収録。既発ソロの延長であるエイヴィとパンダはさて置き、ディーケンのエコーブルなピアノ・サイケとアルト・ヴォイス、そしてジオロジストの霊妙なアンビエント・トラックが聴きどころ。ちなみにニュー・アルバムの『Centipede Hz』とは無縁だが、その残響を聴き取れなくもないわけではなく……なにせアニコレのアルバムとは常に「メンバーそれぞれがその時期に聴いていた音楽の傾向が重なり合う分岐点」であるわけだからして……。


◎Russian Tsarlag/Classic Dog Control Booth

ポスト・アリエル・ピンクとは異論もあろうが、どちらがR.スティーヴ・ムーアの作法・手癖をより受け継いでいるかと問われれば鼻差で軍配が上がるのでは、という気もしないではないカルロス・ゴンザレスのソロ・プロジェクト。アシッド・フォーキィーなミニマル・ギターにコラージュも織り交ぜたシンセ・エレクトロニクス、リズム・ボックスのドップラー効果。ローファイなアンビエンスはピーキング・ライツやサン・アロウに代表されるNNFのお家芸といった感も。あるいはストーンドしたダーティー・ビーチズのような。



◎Police Academy 6/ST
奇矯なエレクトロニクス・ミュージックを量産輩出するAMDISCSから。チャド・ヴァリーをいかがわしくデコレイトしたようなチルウェイヴィーなシンセR&B。多彩なゲストを擁したヴォーカルは宅録女子とは異なり音響化ではなく歌謡化へ。宅録のジョージ・マイケルか?といった場面も含めて色気と俗が混じり合う感覚は、まあなんと承認欲求があけすけというか、あるいみガチ。


◎Saåad/Pink Sabbath
Romain Barbotによるブルックリンのダーク・アンビエント。ラーガのようなウォール・オブ・サウンド、分厚いエコーとドローンは……“ももいろサバス”とはご愛嬌だが、本家(?)“くろいろサバス”とは異なる夢幻の暗黒を創出。



◎Salamander Wool/Espionage Briefcase
ボルチモアのCarson Garhart。エディットのセンスにクリスチャン・マークレイ~ジョン・オズワルド的なものも感じるが、ローファイなダブ・ファンクとコラージュ/コンクレートとトライバリズムの混交は、まるでNNFとSublime Frequenciesの共同リリースを思わせる。


◎Samantha Glass/Midnight Arrival
フリー・フォークの一角Davenportから派生したSecond Family Bandの元メンバー。NNFからのリリースもあるウィスコンシン州マジソンのBeau Devereauxによるソロ・プロジェクト。ローファイなクラウト・ロックというかトリッピーなハード・ロックというか。すっかりストーンドした歌声に浮女子ならぬ夢遊男子といった趣も。しかし今西海岸で起きていることは、100%Silk周辺の動きも含めてフリー・フォークから続く“New Weird America”の新たな局面なんだろうな。


◎Sashash Ulz/Ornamentika

Hooker Visionからリリースとなるロシアのアンビエント作家。宗教的な静寂とニューエイジなトリップの狭間でエレクトロニクスがやわらかなうねりを広げる。溢れかえるシンセとムーグの囀りを引き摺りながら、まるで大気がざわめくようなドローンを展開。


◎Sean McCann/Mirage Warehouse
映像作家としての顔も持つ西海岸のアンビエンティスト。クラシックの影響も窺わせるシンフォニックなエレクトロニクスと持続音。テープ・コラージュも重ねるアヴァンな展開も見せるが、基本ノーブルな曲調で正統派的といえる。


◎Sean Nicholas Savage/Trippple Midnight Karma
モントリオールのサイケデリック・ソウル・ポップ。モータウンや80Sシンセ・ポップ、レゲエやエスノ趣味も備えた……ヴァンパイア・ウィークエンド~MGMT以降のセンスも窺わせる宅録ドリーマー。アーバン・ポップ的というか、サバービアが夢見るサーフ・ミュージックといった趣きも。かといってチルウェイヴ的なコンプ感はなく、正しくローファイ的感性というかな。

◎Seziki Tetrasheaf/Keys To Kishore
まさにNew Weird America、なフロリダのテープ・コラージュニスト。継ぎ接ぎしては塗り重ね、ピッチを弄り倒してチョップド&スクリュード、だだ漏れなアシッド・サイケを垂れ流す……さながらキャロライナー・レインボーとジェームス・フェラーロを混淆させたようなヘルタースケルター感。タイラー的な露悪趣味も。


◎Shingles/White Out Grasshopper等のメンバーを兼ねるJesse DeRosaのソロ。タイトル通り視界を失うまで果てしなく続くようなシンセ・ドローン。動力を奪われたクラスターのごとくふわふわと虚空を彷徨う……。


◎Simon Frank/Unheated Neighbors
トロントのベッドルーム・ローファイ・サイケデリア。アリエル・ピンク・ミーツ・スーサイド? リズム・ボックスに揺られながらノイズと戯れ、よしんば朗々と唄心も披露する面妖ぶりは、しかし不思議と初々しさも滲ませ、ますますカルトなムードを醸し出す。初期の頃のウェーヴスも思わせる。

◎Skoal Kodiak/Kryptonym Bodliak
The Cows(!)を始め錚々たるバンドで活動したメンバーが結集したミネソタのトリオ。Loadの先輩(経歴的には逆か)MindflayerやNeon Hunkの系統に属すトラッシー&トランシーでエレクトロニックなマス・ロック。ベース+ドラムがデフォだがジャムのテイストはライトニング・ボルトよりも近作のブラック・ダイスに近い。ノイジーなシンセとファンキー・ダブなグルーヴ、コンプされたヴォーカルはカートゥーンぽく、アヴァンギャルドに振り切れないポップさが2000年代らしいというか。


◎Spare Death Icon/Survival
さまざまな名義を使い分けるシアトルのJason E. Anderson。ダーク・ウェーヴとウィッチ・ハウスの間隙を突くシンセ・ヒプナゴジア。



◎Speculator/Lifestyle  昨年リリースされた『Nice』が話題を集めたロスの宅録ボーイ。シューゲ~ローファイなポップ・パンク~80sポップ趣味はウェーヴスと初期チルウェイヴを繋ぐイメージだが、ドラッギーなノイズやドローンも披露する身軽な所作は、アンダーグラウンドなすえた匂いはなくカジュアルで現代っ子ぽい。現状、ここがマックスな感もあるが、うまくフックアップされれば化けるかも。

◎Stag Hare/Sand Paintings
鳥の鳴き声や風に揺れる木々の音などフィールド・レコーディングも取り入れつつ、曳航するシンセ・ドローンとパーカッションでオーガニックなアンビエント空間を描き出す。パンダ・ベアも思わせる抜け感のある歌声が誘う、悠久のメディテーション。



◎Stephen Molyneux/Cambodian Field Recordings
ナッシュビルのミュージック・コレクティブ、Horsehair Everywhereの一員がタイやカンボジアで採取したフィールド・レコーディング。 人声や雑踏のグライディング・トーンが奏でるナチュラル・アンビエント、ナチュラル・ドローン……。
















2012年6月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
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2012年4月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
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極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)
極私的2010年代考(仮)……2010年夏の“彼女たち”について)
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