◎Sleep Fern/The Ether Staircase
/Split
90年代のスカムやTigerbeat6のデモ・テープ~B級イルビエントをノイズ・コラージュしたような前者。と、似たような芸風ながら、前者がスログリならサイキックTVとでも言えそうな秘教めいたカルト性、バッドテイストやスピリチュアリズムも覗かせる後者。地続きに見えて両者の間に横たわる微妙な段差に、躓きそうななる。
◎Thickly Painted Walls/You're Just Drawings, Baby
ニュージャージーのノイジー・フォーキィ・ロッカー。タイ・セガールやカート・ヴァイル、はたまたソロ宅録時代のウェーヴスらとの同時代性も感じさせるが、とにかく……作品点数の多さ。これまで約10年の間にCDRやカセットなど60作品近くをリリースしていて、現時点で来年のリリースが6作品予定されている多作ぶりに、陽の目を見ない才能の執念にも似た叫びというか、汲み尽きぬ創作衝動の発露を感じる。
◎Quicksails/A Fantasy In Seasons
ブライトンのBen Billingtonによるプロジェクト。ニューエイジとトライバル、シンセ・アンビエントとフリー・ジャズ、あるいはヨシ・ワダとムーンドッグをコラージュしたようなビザール極まるミクストアップ。まあ、Oneohtrix Point NeverやDylan Ettingerに慣れた2012年の耳には至ってスムースであり快適なわけだが……あらためてNNAの先見性にリスペクト。
◎Zaimph/Imagine Yourself Here
ブルックリンのMarcia Bassettsが自身のレーベルからリリース。出自の詳細を知らないが、No Fun系ノイズ・ミュージックとモダン・アンビエント~ドローンとの結節点、とも。高級コンドミニアムの広告を剽窃したジャケのマテリアリスティックな空々しさが、なんだか象徴的。
◎Cloud Seeding/Ink Jar / Unquestioning
元This Ascensionというバンドで活動していたKevin Serraを中心としたアヴァン・フォーク・グループ。なぜにマイケル・ジャクソンがアートワークに飾られているのか……はさておき、ヴォーカルでフィーチャーされているマリッサ・ナドラーの存在感、に尽きる。マジー・スターと浮女子の間でグラデーションを描くようなフィーメイル・モダン・トリップ・ミュージック。
◎Long Distance Poison/Ancient Analogues
Nathan Cearley率いるブルックリンのトリオ。アナログ・シンセが奏でるスタティックで重厚なドローン。“古代に思い馳せるロマン”というより、“化石燃料となり古層から浸み出した死者の体液”とでもいえそうな、鼓膜に重くまとわりつく感じ。20分強が2曲。
◎Ectoplasm/Featuring Denmother
たぶんおそらくはカナダの女性アーティスト。流行り宅録女子のシンセ・ポップやアンビエント系と比べると、ダーク・ウェーヴというかゴス寄り。歌声はジュリアナ・バーウィック風だか、宙吊りされたような不自由さ、息苦しさが。
◎GOVT/Meanings Not Meant for Humans To Know
ニュージャージのデュオ。編成とBandcampのタグを見てライトニング・ボルトっぽいのかと想像してたら異なり、はたまたハリー・プッシーとかとも違い、ハードコアやノイズやマス・ロック云々ではなくもっと抽象度の高いサウンド。ドラミングは控えめで、不安神経症っぽい焦点の定まらないギターが全体のトーンを決定づけている。Voは女性。
◎Good Time For Dynacom/Freaky Fashion
アルゼンチンの宅録エレクトロニカ・デュオ。ダンテルのローファイ・ヴァージョンというか、ポスタル・サーヴィスのチップチューン・ヴァージョンというか。アコギでメロディーを紡いでヴォーカルを乗せていく様子は、映像で見るかぎりUSインディのありふれたSSW然とした風情も。ところでかつての“アルゼンチン音響派”以降のシーンみたいなものは、今のかの地にはないのだろうか。当時はまだぎりぎり確認できた土地柄というか国柄というか土着性みたいなものが、チルウェイヴ以降のエレクトロ・ミュージックからはすっかり漂白されてひとつのベクトルに回収・収斂されてしまった感も。
Orca Lifeというバンドの一員らしきクリス何某のドローン・プロジェクト。アートワークの文字からはサウンドトラック的なものとして制作されたらしいことが窺えるが、起伏に乏しくて唸るようなシンセ・ドローンに時おり、接続不良のようなノイズがからまりモノクロームのアンビエントを沈殿させる。はたして何物ぞ。
(※2012年10月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年9月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年8月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年7月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年6月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年5月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年4月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年3月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年2月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年1月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)
(※極私的2010年代考(仮)……2010年夏の“彼女たち”について)
(※2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))
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