◎Rayon Beach/This Looks Serious
オースティンのトリオ。オーシーズとクロコダイルズの合いの子のようなピュア・サイケ・ガレージ・ロックンロール。鬱屈としたところがなく溌剌としていて誰からも好まれそう。高音のファズ・ギターと裏声のようなコーラスが、やや頭悪そうで可愛げあり。
◎Mpala Garoo/Ou Du Monde
Kon Tiki GeminiやSunbells Fennimoreとしても活動するモスクワのソロ・プロジェクト。川底を小石が叩くようなウェットなヴァイブ。プリズミックな光彩を放つシンセ・アンビエント。さしずめ初夏の小川で聴くアニマル・コレクティヴ『Campfire Songs』か。
◎Wolf Fluorescence/There is a Mirk Inside Here Which She Must Tint Brighter or Collapse
ドイツのエレクトロニクス。音自体というより音の周りの気配に耳を澄ますようなアンビエンス。「ディスクリート・ミュージック」のモードも。コラージュを交えつつ、薄皮で編まれたような繊細な音響のビブラートが心地よく。M. Geddes GengrasやQuiet EveningsもリリースするSicSicから。
◎Innercity/Another Hard New Age
ほんのりサイバーパンクな香りもするプロジェクト名といい、なんとも直截な作品タイトルがもう……。ベルギーのニューエイジ・プロジェクト。せせらぐエレクトロニクスと、うねるパルス音の波長。bandcampに無造作にUPされた音源のたたずまいがワーカホリック期のダニエル・ジョンストンを思わせて狂気、、
◎Cube/Bride of Walk man
素性不明。スクリューからMacintosh Plus風~Vaperwave(って最近呼ばれるヤツでしょうか)、ファンキー、ブラック・ノイズ、シンセ・ドローン……かと思いきや、タイ・ポップ~エスノ・ディスコがコラージュもろともドロドロと……掴みどころなく、捉えどころなし。とりあえずテープの収録時間に詰め込めるだけ詰め込んだような、脈絡なくスキゾなベッドルーム・エクスペリメンタル。
◎Élément Kuuda/Polargraph
カルフォルニアのChristian Richerによるソロ・プロジェクト。柔毛をなでるような電子音の細かな凹凸が重なり合い、なだらかな稜線のサウンドスケープを描く。優雅なるニューエイジ・ソニック・トリップ。Dry ValleysやHobo CubesもリリースするSacred Phrasesから。
◎The Savage Young Taterbug/Theme For Gasoline Weirdo
愛すべき……というかラヴリーすぎるホームメイド・ジャンク・ポップ。ヒプナゴジアなんて物々しい呼び名より子守唄のほうがぴったり。初期ベックからジェームズ・フェラーロを結ぶ導線上からこぼれ落ちた異形のピュアネス。おなじみNight Peopleから。
◎Berlenga/
Europa Rural/split
マニュエル・ゲッチング~マーク・マッガイアー~ダスティン・ウォン風のレイヤード・ギター・アンビエントをたなびかせる前者。ボンゴ・ビートにシンセ&ギター・ドローンをからませトライバルな熱気を放射冷却する後者。俯瞰で見れば同じ領土の人種だが嗜好も衣食住も異なる好スプリット。プーチンとイルカとキャメロン・ディアスが目印のExo Tapesから。
◎ANDY ORTMANN/OCCULTRONICS
Nihilistを主宰するAOがBeniffer Editionsからリリース。作品タイトルや曲名からしてさもありなんな、陰鬱で雑音に満ちたエレクトロニクス&コラージュはまるでチャネリングや降霊術の記録を思わせる。オヴァルのネガというか、No Fun系のテイストもちらほら。
◎Reighnbeau/Ashes
物憂げなアルペジオとサッドコア~スロウコアなアンサンブルにのせたマーク・コズレク系の枯淡の歌。裏アメリカーナと思いきや先入観を排せばしっとりとした歌ものとして堪能できる。要注目のKevin Greenspon(※クラウド・ナッシングスとのスプリットCSもよかった)もリリースするBridgetownから。
◎CARLTON MELTON/aQ Hits
サンフランシスコのスペース・サイケ・ロッカー。ねっとり練り上げたクラウトロッキンなジャムにブギーを吹かせたギター・ソロがもうもうと揺らめく。同郷のウッデン・シップスらと同じ穴のムジナである、カンとブルー・チアーの子供。
◎Eagle Altar/Cut America
名門Digitalisを運営するブラッド&エデン・ローズ夫妻のデュオ。「アメリカを切り取る」……同郷タルサを舞台に50年代アメリカの荒廃を活写したラリー・クラークの写真集も連想させるタイトルだが、オブスキュアな音響を束ねたドローン・アンビエントは幻想的で夢うつつな輝きを放つ。motion sickness of time travelと描き出すものは近いが、ノスタルジックであまやかな「travel」は追憶するような時間感覚をもたらす。
◎The Accidents/Demo Color
クリーヴランドの新人らしい2人組。エメラルズをあわーく引き伸ばしたような明媚なシンセ・アンビエンス。具体音やサンプリングも織り込みアヴァンな演出・展開も見せるが、魅力はメディテーションを深めたドゥルッティ・コラムを思わせる澄んだ音響の気配。……ところでこの界隈の作品よく使われる「sci-fi」というタームだが、その捉え方というか意味合いがいまいちわからず。「vaporwave」的なものとの近似性もあるのだろうか。
◎TAIYOUTOU/Japan and Japanese
ご存知、吟醸派の顔役的なユニット。「大阪万博の各パヴィリオンを音響化していく」ことがコンセプトとは、恥ずかしながら知らず聴いてました。。ゆったりと流れるシンセ・ドローンに鳥の鳴き声が響くM2“samidare”が和モダンなたおやかさも感じさせて秀逸。
◎Olympus Mons/Reflections of Bliss Lake
Sun Arawのバンド・メンバーも務めるAlex Grayが片割れのデュオ。シンセやハーモニウムが奏でるオーガニックなアンビエントに、繊細なギター・ワークのタッチがみずみずしさを添える。ドリーム・ポップ~アシッド・フォーキィなテイストは残響優美なディレイの賜物。deep tapesから。
◎Bad Chess/Untitled
レーベルいわく「実在しないAMラジオが奏でるリズミック・ソフト・テクノ……」云々。ブラスト・ビートのようなローファイ・ノイズで塗り込め、パルスの飛沫が音像の波形をかき乱す。Derek RogersもリリースするMoon Mist Musicから。
◎Salamander Wool/Espionage Briefcase
バルカン・フォーク、中東ダブ、ガムラン、スラッシュメタル、ミニマル・テクノ、コラージュ、ノイズ・コンクレート……エトセトラエトセトラ。収録時間いっぱいに圧縮&ペーストされた雑音(階)のアマルガム。
◎Western Standards/The Siren
本名をメジャー・E・ミラーという男のプロジェクト。現代音楽やミニマリストのヨーロッパ的美意識を感じさせるその奥深い音像は、端整に重ねられた環境音楽風のアンビエンスの先に、静けさを通り越し鋭敏に研ぎ澄まされた、静謐の極致を描き出す。リリース元はSweat Lodge Guruからで、Motion Sickness Of Time TravelやLee NobleやKon Tiki Geminiなど話題作多数。同じくアイオワに構えるNight Peopleとはやや毛色が異なる。
◎Raajmahal/S/T
ノー・ネック・ブルース・バンドのPat Muranoら含むサイケ・フォーク・トリオ。ハラランビデスのアンビエント・ヴァージョンのような風情もあるが、シルキーな音色のギター・ループ上に女性ヴォーカルを幾重にも重ねたスタイルはジュリアナ・バーウィックぽくもある。
◎Daniel (J D) Emmanuel/Echoes From Ancient Caves
オリジナルは30年以上前にリリースされた作品を、Sun ArawのレーベルSun Arkからリイシュー。ギターやシンセを重ねて編まれたニュー・エイジ・アンビエントはTerry RileyやPhilip Glassの流れを汲むミニマル~現代音楽の系譜を背景に華を咲かせたもので、アリス・コルトレーンをAOR化したようなスピリチュアルなチルアウトも。
◎Reedbeds/S/T
Hooker Visionからもリリースがあるサクラメントのアンビエント作家。A面は牧歌的な光が満たすギター・ミニマル。一転してB面ではディストーションも効かせたサイケ~ドローンを。ジャケのイメージといい、どこか色褪せたような音のテイストは不思議とボーズ・オブ・カナダを連想させる瞬間も。
(※2012年9月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年8月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年7月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年6月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年5月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年4月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年3月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年2月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年1月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)
(※極私的2010年代考(仮)……2010年夏の“彼女たち”について)
(※2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))
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