2014年11月10日月曜日

2014年11月のカセット・レヴュー(随時更新予定)

◎DE TUINEN/MINOR FUNCTION
YYUの『ROOM MUSIC』に先駆けて〈BEER ON THE RUG〉からリリースされた一本。無愛想なモーター音の上で、シンセ音がゆっくりと絡み合い皮膜のようなアンビエンスを作り上げていくA面の序盤。OPNの初期作やDolphins Into the Futureにも例えられるが、インダストリアルやカット&ペーストではなく、コスミッシェな手触りの向こう側にやわらかなサイケデリアを作り上げていくのが流儀。オランダ出身。

◎Run Dust/Zeckenentferner
今年も〈Opal Tapes〉は休みなく働き続けた。まだ一年を振り返るのは早いかもしれないが。インダストリアルというより、もはや“ジョン・カーペンター的”とでも形容したい頽廃的Sci-Fiなサウンド。ウィルスのシルエットを思わせるアートワークが。

◎MAI MAI MAI/Δέλτα
イタリアでノイズ・バンドの一員としても活動する作家のインダストリアル~アンビエント・プロジェクト。自身が主宰するレーベル〈NO=FI Recordings〉という名前からは2000年代初頭のウルフ・アイズや Nautical Almanacら〈American Tapes〉〈No Fun〉周辺を連想させるが、当時のノイズやパワーエレクトロニクスの流れがディケイドを隔ててオンライン・アンダーグラウンドに雪崩れ込んできたという見方もさもありなん。

◎PSALM'N'LOCKER/Op. 01 Music For Dreamachine
同じくHeroin In TahitiやGerman Armyも擁する〈Yerevan Tapes〉から。イタリアはトリノでドローン・フォーク・コレクティヴの一員としても活動する作家のソロ作。ラ・モンテ・ヤングも彷彿させる電子オルガンで演奏された正統派のドローン・エクスペリメンタル。

◎Evvolves/Hang
「shoegaze」のタグ。アートワークからドゥームゲイザーの類かと思いきや、拍子抜けするほどにドリーミーで正統派。80年代〈4AD〉的な耽美さも備えつつ、時折引っ掻くようなギター・サウンドは90年代の西海岸に数多いたオルタナ勢を思い起こさせる。

◎Decimus/The Abduction of Kreiddylat Part 1
ノー・ネック・ブルース・バンドのPat Muranoによるエレクトロニクス・プロジェクト。〈Digitalis〉や〈NNA〉からではなく自主リリースの連作。フィールド・レーディングやドローンも織り交ぜた鎮痛でトリッピーなメディテーション音楽。ノー・ネックの意匠が随所に。

◎Multi-Surface/Magic Power of the Magnetic Tape
シカゴの〈Lillerne Tapes〉から日本人のエレクトロニクス作家。両手で三角形を作り、その間から目玉が覗いている。何やら暗示的なアートワークだが、細やかなシンセのレイヤー、やわらかなドローンがゆっくりと隆起しながら、羽音のように瞬く小さな音々をゆっくりと押し流していく。

◎Pal/Pal EP
UKの〈Birkhouse Recordings〉から。ジャケから窺える通りたぶん男女2人組。アルーナジョージが〈100%Silk〉からリリースしたような、、とかもっともらしいことを書こうと思ったがどうなのか。ほんのりSci-Fiでうっすらインダストリアルなシンセ・ハウス。

◎Ray Phaze Tropic/Motello Fish
米西海岸の〈Rotifer〉から。ヴェイパーウェイヴによる広告イメージの剽窃をさらに抽象化したような一連のアートワークが象徴的な同レーベル。幾何学柄に穴掘られた迷路を進むような模糊とした感覚が張り付くシンセ・アンビエント~スペイシー・ドローン。

◎​Lost Trail/.​.​. à séjourner dans cette chambre toujours
吹き曝しの倉庫の窓枠を切り取ったようなアートワーク。荒涼としたアンビエントの寒風。シンセやテープ・ループ、フィールドレコーディングス、各種生楽器を配したサウンドスケープは楽曲ごとに表情は違えどオーセンティックな佇まいで、しかしとても謎めいている。

◎Urotsukidōji/One
もういっぽんフロリダの〈Illuminated Paths〉から。たぶん碇シンジなジャケット。蒸気を吹くようなシンセのビート、モノローグ、ギターのアルペジオに電子音が旋回しながら巻き付き、どす黒いダーク・アンビエントを吐き出す。ジョン・カーペンターによる50年代のフィルム・ノワールのような。ところどころダーティ・ビーチズっぽい感じも。

◎MARRECK/MECHANISM
安定の〈Tesla Tapes〉。鉄粉吹きすさぶマシーン・テクノ。ファクトリー・フロアさえポップ・ソングに思えるハードコア。無機質。ロボトミックなDerek Rogers? 別名義で〈Opal Tapes〉からリリースしたこともあるそうで、この界隈は相も変わらず、、裏切らない。

◎VANISHING/RAMIFICATIONS
Gnod界隈も絡んだトリオ。なんというか、デビュー初期のスモッグがギターの替わりにシンセを手にしてインダストリアル~ダーク・アンビエントをやったとしたら、こんな感じになったのでは。パルス信号とリズム・マシーンに挟み込まれて、不穏なモノローグが上下しながらあてどなく漂う。やはり〈Tesla Tapes〉から。

◎RITES/Nadador del Alma
スペイン(人?)の電子作家によるソロ・プロジェクト。2000年代前半あたりのグローイングが今流のシンセ・アンビエントをやったかのような美しい浮遊感。ドローニッシュではなく、作品を通してリズミカルなフロウを感じさせる。

◎Jerry Paper/Big Pop For Chameleon World
今年各所で名を上げたブルックリンの作家。〈Orange Milk〉の顏はインパクト的にジャイアント・クロウに譲ったかも?な感もありますかしら。イーノがエスノなベッドルーム・ポップをやってるかのような、しかも歌いながら⁉みたいな煌めきを随所に。美しき脱臼。








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2014年9月のカセット・レヴュー)
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2014年5月のカセット・レヴュー)
2014年4月のカセット・レヴュー)
2014年3月のカセット・レヴュー)
2014年2月のカセット・レヴュー)
2014年1月のカセット・レヴュー)
2013年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
2012年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))
極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)


1 件のコメント:

  1. はじめまして、ブログにリンクをはらせていただきたいのですが、リンクは自由でしょうか?

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