2012年6月22日金曜日

極私的2000年代考(仮)……トータスのアザー・サイドを総括するレアBOX『A Lazarus Taxon』


「1stアルバムのリミックス盤として1995 年に発売され、長らく廃盤となっていた『Rhythms, Resolutions &Clusters』(マイク・ワットによる未発表リミックス・トラックを追加収録)を中心に、シングル/EP収録曲、コンピレーション提供曲、リミックス・ヴァ-ジョン等、アルバム未収のレア音源を多数収録したCD3枚 +プロモ・クリップや貴重なライヴ映像を収録したDVD1枚によるボックス・セット『ア・ラザラス・タクソン(A Lazarus Taxon)』をリリースする。」(※リリース・インフォより)

●今回のインタヴューでは、来月リリースされるボックス・セット『ア・ラザラス・タクソン』にちなんで、また私たちの雑誌では今回90年代を振り返る特殊記事を企画していることもあり、トータスのこれまでの歴史を振り返るような総括的なお話がうかがえればと考えてます。なのでよろしく!
「ああ」

●今回のボックス・セットのような、これまでのバンドの歴史をある意味で振り返るような作品をリリースすることに、率直にどんな感想をお持ちですか。
「はぁ~(ため息)………………フン(鼻を鳴らす)・…………よくわかんないっていうのが、率直な感想かな」

●(笑)。
「別に(笑)、何て言うか………………そうだね。とくに感慨とかはなくて、こうして作品を集めることができてよかったな、と。変則的な形でリリースしてきたものを、集めて出すには、今が一番いいタイミングなんじゃないかと思い…………ちょうど作品のほうもかなりの数が出揃っていたんで」

●監修作業はどうでしたか。
「えーと…………実際、大変な作業だったんだけど……オリジナルの音源を探したり、それを編集して、マスターし直してって、結構大変ではあったんだけど、まあ、何て言うか、こうして一つの形にまとめることができて、非常によかったというか、達成感はあるよね。作られた時期も個性も全然違ってるけど、個々の楽曲の個性を殺さずに活かすことができたんじゃないかと思ってるよ」

●実際、どのくらいの期間作業していたんですか。
「うーんと…………参ったなあ、というのも、だいぶ以前から取りかかってたんで。途中、間をぼこぼこ開けてっていう感じだったから、実際にどのぐらいかかったは何とも言えないよ」

●さっき言った「いいダイミング」というのは、どういう意味で?
「まあ……前回のアルバムが出たのが、2年も前で、今ちょうど新しいアルバムに向けて作業し出したところなんだけど、その間を埋めるのにちょうどいいんじゃないかっていうことと……うん、要するにそういうことだよね。それと前々から、ボックス・セットみたいな形で出したいな戸は思ってたし、今がその時期だと思ったんだよ」

●そもそものボックス・セットの制作意図は? 
「入手困難の作品が多かったからね。今ではもう手に入らないか、手に入ったとしてもブートレックや、インターネットからダウンロードされたもので、サウンドの質もきっとそんなに良くないものだろうから。だから、ちゃんとした音と形で聴けるように、と……実際、今回入ってる曲の中には、今回マスターし直したことで、オリジナルに比べて格段にサウンドがよくなっているものもあるし」

●トータスは今年で結成15年目となるわけですが、こうした作品をリリースする背景には、何かの一区切り、みたいな感覚もあったりするのでしょうか。
「いや、ないね」

●そうですか(笑)。
「アンソロジーや名作集みたいな形を取ってたら、もしかして一つの区切りを迎えた気になってたかもしれないけど、今回のボックス・セットに関しては、今ではなかなか手に入らない作品を集めてみましたっていう感じだから。これを機にトータスの歴史を総括したとかでもないし、ただ単に、あちこちバラバラに散らばってた音源を一箇所に集めましたっていうだけだから」

●ベスト・アルバムとか、グレイテスト・ヒット的なものではないと。
「全然、まったく。むしろベスト・アルバムとかグレイテスト・ヒットの類や、ほど遠い位置にある作品だと思うけど(笑)」

●まあ、そうですね(笑)。
「わからないけど、ベスト・アルバムにしては、あまりにも奇怪な作品が入りすぎているし(笑)…………グレイスト・ヒットにしても、少なくとも“ヒット”でないことはたしかだよ(笑)」

●とはいえ、今回のボックス・セットのリリースにまつわる作業を通じて、これまでの歩みを俯瞰するような感覚もあったのではないですか。
「えー………………フン(鼻を鳴らす)。まあ、何て言うか、個々の楽曲の違いだとか、それぞれ別の時期に作られた音を並べてみることで、これまでこういうふうに歩んできたんだっていうのがわかって、それは実際おもしろかったけどね、自分たちが音楽的にどう進化・発展を遂げてきたのかがわかって……。さっきも言ったけど、今回のボックス・セットは、いわゆる名作集みたいなものではないし、トータスというバンドを知るための入門として一番ふさわしいアルバムでもないけど、少なくとも、瞬間を垣間見ることはできるというかね。そうした瞬間を繋げていくことによって、トータスがどのような経過を経て今に至ってるのかがわかるようになってるんだ」

●どんな15年だったと漠然と感じますか。
「あー………………一言、『こうだった』って言えるものじゃないよ。やっぱり、何て言うか……あまりにもいろいろありすぎて。自分は今36歳だけど、36年のうちの15年だから、自分の人生のかなり大きな位置を占めるものであるし、そこだけ区切ってどうこうと言うわけにはいかないというか……自分の人生のほとんどの時間をトータスとして過ごしてるってことだからね。何だろう……感想っていっても、自分でも何て言ったらいいのか、わからないよ」

●15年前の自分はどうだったか覚えていますか。
「覚えてるっていったら、覚えてるよね。15年前からほとんど変わってないところもあるし」

●変わらないところって、たとえば何ですか。
「まあ、基本的なところというか、音楽に対する姿勢や、そこに何を求めるのかって部分について言えば、15年前と同じだよね。常に、斬新で新しいアイディアを求めていくこと、常識や型に捕らわれないっていうね。その部分については、昔から一貫してるよ」

●音楽に対して、そういう姿勢を貫かれるようになったのは、どうしてですか。
「それは………………たぶん、成長する過程で、いろんなものにさらされてきた結果、その全部を自分の音楽に反映させることによって、そこを足場にして、それぞれの音なりアイディアなりが、もっと可能性を開いていけたらなって思ってるからだろうね」

●今回の作業を通して、トータスとしてこれまで歩んできた足取りがはっきりわかったっていう感じですか。
「いや、そこまではっきりとしたものじゃなくて…………あえて、言葉にするのなら、暗くてぼんやりしたイメージなんだけど、何も見えないなりにも前に進んでるってことは確認できたよね」

●前進してるっていうと、たとえばどんなところで?
「まあ、確実に言えるのは、音のパレットが広がったってことだよね、それはもう明らかに。初期の頃の作品はもっとこう…………“単純”とは言いたくないけど、何だろう……サウンドの種類が限られてたっていうのはあるよね。それは明らかな違いだよ。それとたぶん、えー……初期の頃よりも、いろいろ試してみたい気持ちが強くなってるというか、今のほうが実験精神が旺盛になってるね」

●若い頃よりも今のほうがエクスペリメンタルになってるってことですか。
「たぶんね」

●今のほうがラディカルというか?
「ラディカルまでいくと、ちょっと行き過ぎだと思うけど…………エクスペリメンタルといっても、ジョン・ケージとか、そういうレベルではないし(笑)。音楽の概念そのものに疑問を抱かせるようなことはしていないと思うし……“ラディカル”って言葉を使うなら、自分たちよりももっとふさわしいアーティストがいると思うよ。フフフ」

●普通の人の理解の範疇を超えた音楽を作ることには興味がないというか?
「うーん……今のところは。…………もしかして、来年ごろやってみるかもしれないし(笑)」

●そしたら、どんな感じのものになると思いますか?
「来るべき時が来たら、なんとかやってみせるさ」

●音楽的なことでも、気持ちの部分のことでも構いませんが、この15年間であなた自身、あるいはバンドにとっていちばん変化を感じることは? 
「まあ、基本的なところで、機材や楽器の扱いがうまくなったとか、少しだけ賢くなったとか、レコーディング環境とか、そういうことだよね。それと、たぶん、世の中で何が起こってるのか、前よりもよく見えるようになったとか……一般的なところだよ」

●今回のボックス・セットには、この15年間に作られたさまざまな時代の音源が収録されているわけですけど、この15年間の中で自分たちにとってターニング・ポイントとなった瞬間、あるいは作品をあげるとするなら?
「いや、とくにはないよ。どのアルバムがターニング・ポイントっていうことではなくて、アルバムを作るごとに自分たちの世界なり、サウンドなりを新たに広げる良い機会だと思ってきたし、ターニング・ポイントとなるような、瞬間だとか、特別な出来事っていうのは思い浮かばないよ」

●すべての作品が繋がってる感じですか。
「繋がってるっていうか……まあ、そうだね。自然に成長していった感じだよ」

●『ミリオンズ・ナウ・リヴィング・ウィル・ネヴァー・ダイ』をリリースした前後から「ポスト・ロック」という言葉が聞カれるようになり、それとともにトータスの名前も一気に注目されるようになります。「ポスト・ロック」という言葉に積極的な、ポジティヴな意味をあえて見出すとするなら、それはどういえると思いますか。
「………………はぁ(ため息)……“ポスト・ロック”って言葉に対して、個人的に、ポジティヴな意味を感じないんだけど」

●自分たちの音楽が、“ポスト・ロック”というものを結びつけられてることに対して、どう感じますか。
「いや、そこらへんについても、とくに考えたこともないんだ。『ジャーナリストが変わったものを説明するときに作った言葉なんだな』って、それくらいの認識しかないよ」

●自分がジャーナリストだとしたら、自分たちの音楽をどう定義しますか。
「インストゥルメンタル音楽」

●シンプルですね(笑)。
「シンプルっていうか……まあ、そうかもね。たぶん、あえて定義しないようにしてるのかもしれないよ……安易な定義づけはしない。うん。定義することで、自分で自分にセーヴをかけるようになってしまうから」

●“ポスト・ロック”とは「ロックを、精神論や一時の感情にまかせることなく、真摯な創作倫理をもって音楽的/技術的な前進に導く態度」であると、トータスから教わった部分もあります。
「うん、まあ、わかるような気もするけど…………少なくとも、音楽的、技術的前進ってところに関しては。自分たちとしては何もプロのミュージシャンとして、楽器やコンピューターを巧く扱えるようになりたいと思って、ここまできたわけじゃないからね。優れた演奏家、エンジニアになることには、そもそも興味がなく……というか、他のメンバーがどう思ってるのかはわからないけど、少なくとも、自分はただ技術的に優れたミュージシャンなりエンジニアになることには興味がなく……ただ、使える道具が多ければ多いほど、音楽的にもっとおもしろいことができると思って、ここまでやってきちゃったわけで……もちろん、自分たちの技術に自信と誇りは持っているけど、最終的に目指してるところはそこじゃなくて、もっと別のところにあるんだよ。だから、ある意味、ナイーヴな気持ちから始まってるというか、ナイーヴであったからこそ、ここまで前進できたっていうことはあって……。技巧や技術の部分で自分たちに限界を設けずに、自由にクリエイションできるように心がけてきたから。自分がもしもアーティストではなく技術者だったら、きっとどこかで限界を感じてたかもしれないけど、ナイーヴだったからこそ、限界を感じずに来れたのかもしれない」

●あらためて過去の音源を聴き返してみて、新たな発見や再発見したこと、あるいは考えさせられたことはありますか。
「えーっと…………難しいところなんだけども…………昔はもっと我慢強かったかもしれないね」

●我慢強いって?
「何かあると事を長引かせて、延々と作業するのが好きで、全然飽きもしなかったんだ。ただ、今は一つのことに、そこまで執拗に作業することは滅多にないという…………」

●それはまたどうして?
「不思議だよね。自分でも何でだろうと思うけど」

●何ででしょうね(笑)。
「我慢できなくなったってことでもないんだけど、何だろう……今は執拗に一つのことに集中するよりも、あれもこれも、しかも今すぐに(笑)、試してみたくてたまらないんだ。だから、一つのことにそこまで時間をかけてやってられないんだよ(笑)」

●それはアプローチが変わったってことですか、それともフォーカスが変わったってことですか?
「えーっと、フォーカスだね」

●フォーカスが変わったことで、今は……?
「今は単なるADHD(注意欠乏他動性障害)だよ(笑)」

●過去の作品や音源というのは、あなたやトータスにとってどういう意味を持つものなのか。それは単なる過去に過ぎないのか。それとも常に現在の自分たちにヒントをくれるような、何かをフィードバックさせる可能性を含んだものなのでしょうか。
「えーっと…………うーんと(笑)……そのー、ほら、昔から過去には執着しないほうなんで。すでに終わってしまったことよりも、新しいものを見るクセがついてるというか。うん、そうだね、過去は過去として、それを無理に掘り起こすことはしないというか」

●過去から学ぶこともありますか。
「学ぶことがあるとしたら、まあ、『あそこの、あれは失敗だったな』っていう…………それくらい。二度と同じ失敗をしないこと、かな」

●今のあなたの耳には、たとえばファースト・アルバムの『トータス』はどんな風に聞こえるんでしょうか。ついアラ探ししてしまう? 
「えーっと、どういうふうに聴こえるか………………プロっぽくない音だなって思うけど」

●どういう点において?
「うーん……何か、全体的に荒削りな感じがするんだよ。ただ、それが別に悪いっていうわけでもないんだけどね…………というか、そこがむしろ、あのアルバムの魅力だったりしてね。ただ、何て言うか、ほら…………今の自分たちが作ってたら、もっと全然違った感じに聴こえるんだろうな、と」

●たとえば、今あのアルバムを作ったら、どんな感じに聴こえると思いますか。
「えーっと、たぶん、音にもうちょっと深みが出るだろうね。あとは、そのー…………ほら、音の感触みたいなものがちょっと違ってくるのかな、と。えっと、今、頭の中にぼんやりと思い浮かんでるんだけど、言葉にするのは難しいね」

●これまでリリースされてきた作品は、あなたの中ではそれぞれが完結したものなのでしょうか? それとも次の段階へといたる布石となっている?
「…………うん、まあね。これまでのすべての作品が前に向かって続いてるというか。どの作品も、その次に来る作品の可能性を示唆してくれているし、失敗から学ぶってこともあるだろうし、最終的には全部が身になってるというかね。大きな絵で見たときに、一つ一つのパズルがどこでどのように繋がってるのかがわかるんだ」

●失敗って、たとえばどんなところに感じますか?
「失敗っていうより、自分の感性が変わったってことなんだろうけど、そのときにはこれでいいと思ってたものが、後になって全然許せなくなったり……あるいは、いろいろなことに気づくようになったり。前だったら、そのまま流していたところを、今はこう……何て言うか……言葉が思い出せないんだけど、何だろう……そのー…………昔に比べて近視眼的な見方をしなくなったというかね」

●今月25日はオール・トゥモローズ・パーティーズ主催の「Don’t Look Back 06」というイヴェントで『ミリオンズ・ナウ・リヴィング・ウィル・ネヴァー・ダイ』の収録曲を全曲演奏される予定だそうですが、それはあなたの中で回顧的なものとして受け止められているものなのか。それとも新鮮な何か、別の可能性を感じさせるものなのでしょうか。
「そりゃ、可能性を感じさせるものだよ。当然」

●どういう意味で?
「というか…………今回こういう話が出たのは、ひとつにはあのアルバムの曲の、いくつかはまあ、ライヴでやったこともあるけど、96年以降はほとんどライヴでも演奏してなかったし、これまでライヴで一度も演奏していない曲もあるしね。だから、自分たちにとって、まったく新しい初めての試みになるよ」

●他に何を期待しますか。
「喜びと、驚きと……それと、最後まできちんと演奏できますようにってことかな」

●ちなみに、今のあなたから見て『TNT』についてはどう評価していますか。あの作品で行われた、プロトゥールズによるハードディスク・レコーディングという手法は、当時のいわゆるロック・バンドのなかでは画期的なものだったと思うのですが
「うん、まあ、今でもすごく満足しているし、テクノロジーにすごく助けられたなってことは感じるし、そこで可能性が広がったってことについては、たしかによかったよね。…………まあ、サウンドに関して少し問題があるとはいえ」

●どこが問題だと感じるんですか。
「全部マイナーだから。でも、それは僕自身の問題なんだ。自分がそこを問題視しなければいいだけの話だから」

●『TNT』も他の作品もそうですが、「誰もやったことのないことを」「自分たちだけのやり方でやる」ところにこそ、トータスのトータスのゆえんがあり、トータスが真にイノヴェイティヴなバンドであり続けているバンドだと思います。あなたは自分たちの音作りの上で「イノヴェイティヴであること」をどのように定義しますか?
「あー………………よくわからない。というか、そこに自分の関心があるわけじゃないからね。今までそういう視点から考えたことがないというか、自分たちは自分たちのやるべきことをやっているだけだからね」

●たとえば、バンドとしてどうありたいとかってありますか?
「いや、単純に、自分たちが楽しいと思える音楽をやっていけたらいいと思うけど。『この音、いいね』とか、あるいは自分たちの興味を引くような……うん、本当にそれだけだよ。他にというか、それ以外の動機はないし、ただ自分たちのやることをやって、で……それがうまくいきますようにって(笑)、願うだけだよ」

●ちなみに、あなたが選ぶ90年代のベスト・アルバムは?
「自分にとってのベストってこと?」

●そうです。
「どんなジャンルの人でも?」

●ええ。
「ふぅ~(ため息)………………フン(鼻をならす)……………………難しいな」

●みなさん、そうおっしゃいます。
「………………どういうのになるんだろう………………絶対に、これっていうのがあるはずなんだけど………………ちょっと待って、今、調べてみるから………………………………(戻ってきて)他の人たちは何て言ってるの?」

●人にも寄りますけど、アメリカのバンドで多いのは、やっぱりニルヴァーナの『ネヴァー・マインド』とか、イギリスの若いバンドだったら、オアシスとかブラーとかだし……あと、レディオヘッドとか……。
「ああ」

●ちなみに先日マウス・オン・マーズと話したら、エイフェックス・ツインって言ってましたけど……。
「参ったな………………………………サン・シティ・ガールズのアルバムとか、素晴らしいと思うけど…………サン・シティ・ガールズの『Torch Of The Mystique』とか……で、いいでしょうか(笑)。『Torch Of The Mystique』こそ、90年代のベスト・アルバムだと、僕はここで声を大にして言うよ」

●理由は?
「ふぅ~(ため息)………………まあ、何て言うか、彼らは長いこと一貫して同じことをやっているんだけど……って、要するに、ありとあらゆる影響やサウンドを取り入れてっていうことで、そうした彼らのアーティスト性みたいなのが、一番よく表れてるのがあの作品だと思うよ」

●90年代を象徴するアルバムということでは?
「90年代を象徴するアルバムね………………参ったな………………90年代の空気を伝えるアルバムってこと?」

●そうですね。
「90年代の、どのへん?」

●どのへんでも。
「まあ、たしかにエイフェックス・ツインとか、90年代を象徴してるだろうし……どのアルバムかってことでは…………一番好きなのはいつも『アンビエント・ワークス』なんだけど」

●どういった意味で90年代を象徴してると思いますか。
「あのアルバムがすべての始まりだからね。あのアルバムの登場によって、それまでにないまったく新しいサウンドが誕生して、それまでとは違ったまったく新しいサウンドを追求するまったく新しい人種があらわれて……すべてはエイフェックスのあのアルバムから始まってるんだよ」

●最後に……月並みな質問ですが、この15年間も立ち止まることなくあなたを音楽を作ることに駆り立てたものとは?
「あー………………わからないよ。こういう質問って、答えにくいよ(笑)………………うん(笑)……だから、何て言うか、扉を開けた向こうに、また新たな扉があらわれて、それがずっと続いていってる感じだからね」

●この15年間で得た最大の教訓は?
「最大の教訓ね……………………ふぅ(ため息)…………最大の教訓があるとしたら、いまだに最大の教訓を得ていないってことじゃないかな」

●何か別の方向に進もうと思ったことはないんですか。
「役者になるとか?」

●役者でも何でも。
「そんなのいっつも思ってるよ。どこから契約を取ってきてくれないかな」

●誰と一緒に仕事をしたいのか、教えてくれるのなら。
「そんなのわかんないよ…………相手の気持ち次第だね。心の準備はもうできてるので。どなたでも、一度、こちらに企画書を送ってもらえれば(笑)」

●もうひとつ最後に。一昨年『イッツ・オール・アラウンド・ユー』をリリースされた際のインタヴューであなたは「具体的にどう変わるのかは自分でもよくわからないけど、でも今回のアルバムのあと、今までとは違う方向に進んでいこうとしているっていうのは僕にもはっきりとわかるんだ」と話していました。現時点でどのようなバンドの未来を、今後の方向性を思い描いているのか、またその実感をお持ちでしょうか。
「いや、まだ見えてないんだよ」

●見えてきそうな感じはありますか?
「もうすぐ見えてくるはずなんだけど……まあ、来年くらいには」


(2006/08)



極私的2000年代考(仮)……トータスは健在する(増補版))
極私的2000年代考(仮)……トータスの源流、バストロを振り返る)

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