2012年4月4日水曜日

極私的2000年代考(仮)……ライトニング・ボルト、カクカタリキ


2000年代を迎え、ニューヨークを筆頭に再び活気を取り戻したアメリカン・アンダーグラウンド・シーン。その大きな起爆剤のひとつが彼ら、ライトニング・ボルトであるという意見に異論は少ないのではないか。

1994年に、地元ロードアイランド州プロヴィデンスのアートスクールに通う学生だったブライアン・チッペンデール(Dr)とブライアン・ギブソン(G)によって結成されたデュオ。以来、その“スラップスティック・ハードコア”“人力メタル・マシーン・ミュージック”とでもいうべき破壊的なサウンド&パフォーマンスが話題を呼び、ブラック・ダイス(の元メンバーのヒシャムがVoとして参加していた時期もある)やイレース・エラッタといった同世代の地下人脈と連帯をみせる一方、ソニック・ユースをはじめとする先行世代を刺激し巻き込みながら、彼らはその名を世界中に知らしめていった。今では彼らの存在は、インディ界のちょっとしたセレブリティであるといっても過言ではない。

はたして彼らは、フリー・ジャズや現代音楽の精髄を受け継ぐ異端的後継者なのか。それとも、耳鳴りする轟音やメタル的な速弾きの美学に喜びを覚える天然無垢なロックの野性児なのか――ブライアン・チッペンデールに、その音楽哲学、そして2年ぶり4作目となる新作『ハイパーマジック・マウンテン』について訊いた。


●どんな感じでライトニング・ボルトは始まったんですか?
「僕たち二人は、大学が一緒だったんだ。アート・スクールに通ってたんだけど、僕の方がもう一人のブライアンより何年か学年が上で。ブライアンは、入学してすぐのころから、あいつはベースがうまいって、学校で評判になるくらいだったね。で、知り合ってすぐのころはもう一人、ギタリストも入れてたんだけど、結局は僕とブライアンの二人だけでやってみようってことになって。最初にライヴをやったのは、もうずいぶん前で、94年だね。二人だけだったけど、すごく楽しかった。そのあと、1年半くらい、ヴォーカルがいた時期があったんだよ。それも日系の」

●ブラック・ダイスのメンバーだった?
「うん。ヒシャム・バルーチャっていって、ライトニング・ボルトのあと、ブラック・ダイスに入ったんだけど、今はそっちも脱退してる。彼は2回目のライヴから参加したんで、最初のライヴは二人きりだったんだ」

●アート・スクールでは音楽関係の勉強をしていたんですか? それとも美術とか、他の分野を専攻していたんでしょうか?
「僕もブライアンも、勉強してたのはヴィジュアル・アートだよ。ブライアンは、アニメーションをずいぶん作ってたし、プレイステーション用のゲームの会社でアルバイトをしていたこともあるんだ。独立系の会社で、音楽系のゲームを作るっていうのでその手伝いをしてたらしいけど、僕は実物を見たことはないな(笑)。僕の方は、シルクスクリーンなんかを使って、版画や印刷物をたくさん作ってたよ。ポスターとか、ドローイングとか、その手のものだね。実は今晩も、インタビュー前にやってたくらいなんだけど」

●そうですか。たとえば、あなたたちの「生家」ともいえるフォート・サンダーの内装なんかを見ると、マイク・ケリーや草間弥生といったアーティストの名前を連想したりもするのですが、ご自身で制作している作品も含めて、そうしたヴィジュアル・アートが音作りのインスピレーションになる場合もありますか?
「うん、そう思うよ。 そんな話を二人ですることもあるし。僕もブライアンも、いろんなジャンルのものを作ることを通して、自分たちなりのファンタジーの世界を創りあげているんじゃないかな。僕は漫画もずいぶん描くし、フォート・サンダーにしても、僕が今住んでいる家にしても、いろんなものを飾り付けて、ほかにないような家にしているしね。音楽にしても、僕たちにしかできない、ユニークな世界を創っているっていう点では、ヴィジュアル・アートとと同じだと思う。自分で作ったものに包まれて暮らす感覚、って言ったらいいのかな。ライトニング・ボルトそのものが、僕たちにとっては音楽で魔法の世界を作り出しているようなイメージなんだ」

●さきほど、初ライヴは94年だったという話がありましたが……。
「うん、ただ、94年の12月だったから、実質的に活動が始まったのは95年だね」

●当時はたとえばロラパルーザが最初の開催中止を迎えるなど、アメリカではグランジやオルタナティヴといった90年代初頭のインディ・ロック・シーンのバブルがはじけた頃だったと思いますが、そうした当時のロック・シーンについては、どのように見ていました?
「いや、僕だってあのころはふつうにグランジを聴いてたよ(笑)。サウンドガーデンとか、ニルヴァーナとか。でも、僕の住んでるプロヴィデンスっていう街では、音楽シーンが盛り上がって、面白くなり始めたのがちょうどこの頃だったんだよね。僕たちが拠点を構えて、そこでライヴを始めたのも95年だしね。どうしてかは自分でもわかんないんだけど、それまでは僕も、出身地とかジャンルとかにこだわらないでいろいろ聴いてたのに、この頃になって、地元のバンドの良さに突然気づいたんだよね。急に面白いバンドが次々と出てきて、お互いを刺激するようになってたから。だから当時、僕が一番注目して、熱心に聴いてたのはそういう地元のバンドだった。もちろん、アメリカ中で人気のあるような、メジャーなバンドもコンサートに来てたし、日本のバンドも来たりしてたけど。僕たちの音楽には、日本の影響がすごく大きいんだ。あの頃も、ボアダムスのライヴを見に行ったりしてたはずだよ。ただ、変な時期ではあったよね。グランジも下火になって、みんなが共感できるような、大きなムーヴメントがなくて。90年代の初めは、ヘルメットみたいなノイズ・ロック・バンドもグランジつながりでけっこう受け入れられてたんだけど、僕たちがバンドを始めたのは、ちょうどそういう盛り上がりが終わったころだった。まあ、少しはそういうものもあったかもしれないけど、地元のシーン以外とは、特につながりを感じたりはしてなかったな」

●たとえば、ライトニング・ボルトの結成には、グランジやオルタナティヴといった前の世代のロックに対するカウンター的な意味合いもあったと思いますか?
「いやー、どうだろう、カウンターっていう意識はなかったと思う。どちらかと言うと、ほんとはああいうサウンドにしたかったんだけど、どうやったらいいのかまるでわかってなかった、って感じだよ(笑)。勘違いから始まったバンドなんだ。まあ、だいたい、バンドってこうなることが多いけどね。目指してるものはあるんだけど、なぜか違う方向に行ってしまうっていう。だからこそ面白いわけで」

●それもそうですね。
「それに、目指していたところにたどりついたとたん、不思議とバンドの魅力って失せてしまうことも多いし。ライトニング・ボルトも、そうなってないといいんだけど(笑)。でもほんと、今でもあの頃のロックを聴くくらいだし、グランジとは違うものを作ろうとか、意識してはいなかったはずだよ。自分たちが楽しめるものにしようっていう、それだけで。そのなかで、できることの幅を広げていこうとはしていたけどね」

●だとすると、ライトニング・ボルトのユニークなサウンドであるとか、楽器編成も含めたバンドの方向性というのは、結成当初からヴィジョンを持って始めたというわけではなくて、偶然にというか、本能的にたどり着いた感じなのでしょうか?
「うん、そうだね。本能的というのが、一番あたってると思う。実際、最初はほかにもメンバーを入れようともしたわけだけど、うまくいかなくて、結局この二人に落ち着いたんだし。ほかに入ってくれそうな人の当てがなかった、みたいなところもあるんだ。でも、このメンバーでやっていくうちに、バックアップ・メンバーはいらない、二人で十分やりたいことはできるって自信をつけていったんだよ。まあ、二人だけじゃ、ステージ映えしないとかいうことはあるけどね。ただ、こういうスタイルになったのは、やっぱり本能的なものだと思う。僕たち二人は、もともとかなり変わってるから、直感のおもむくままにやっていれば、他のアーティストとは違うものになってしまうっていう」

●でも、最初っから今みたいな神懸かり的な速さでドラムが叩けたんですか?
「うーん、もう少し、ゆっくり目だったかな(笑)。だんだん速くなってる気は、自分でもする。それと、今よりヘヴィーだった。今が軽いってわけじゃないけど、もっとトライバルな感じっていうか。それは、あの頃聴いてたバンドの影響もあったと思う。カリフォルニア出身のクラッシュ・ワーシップとか。ドラマーが4人もいて、すごくヘヴィーで、儀式というか、呪術的な感じがあったんだ。あと、ちょっと今名前が出ないけど、いくつかヘヴィーなドラムが印象的なバンドがあって、その影響で、僕も今ほど速くなくて、タムももっと使ってたね。そこから、どんどん速くなっていって……どんどんシンプルになってるのかもしれないな」

●そのあたりについては、よく指摘されるようにボアダムスやルインズやメルト・バナナといった日本のノイズ・バンドからの影響もあったのでしょうか?
「日本のバンドの存在は、すごく大きいよ。とくにボアダムス。メルト・バナナも、とにかく凄まじいエネルギーがあって、圧倒されるね。日本のバンドには、ずっと刺激を受けてきたし、今でもそうだよ。この前、日本に行ったときも、ほんとにいい日本のバンドとたくさん共演できたしね。あとは、アメリカにも何組か来てくれたから、そのときに一緒にやったりとか。DMBQとか、今年のハロウィンにプロヴィデンスでライヴやるんだよ。でも、どうかな、僕たちが具体的に何を得たのかっていうのは、難しいところだね。たとえば、ボアダムスなんて、楽器を超上手に弾きこなしつつ、同時にそういう演奏をぶち壊すようなところもあって、そこがすごいと思う。とくに、昔のボアダムスはそうだったな。楽器を、ものすごく雑に扱ったりもするんだけど、結果できたものははちきれそうなくらいの生命力に満ちている。そういう、確かなスキルと、溢れるエネルギーが両立しているところが、日本のバンドのすばらしいところだし、そこは僕たちにも通じる要素があると思う。なぜかはわからないけど、アメリカよりも日本のバンドに、僕はそういうものを感じるんだ。それと、混じり気なしの狂気みたいなものもね」

●では日本以外で、リスペクトするミュージシャンというと、誰になるのでしょうか?
「そうだなあ……沢山いるはずなんだけど、名前が出てこないよ……そうだな、今のバンドだと、USAISAMONSTERはすごくいいね。アメリカのレーベルが一緒なんだけど、ニューヨーク出身で、僕たちと同じ2ピースのバンドで、共通するところもすごく多い。最近はよく一緒にライヴやってるよ。あとは、地元にもいいバンドがたくさんいるよ。ありすぎて、名前がぜんぜん出てこないくらい(笑)」

●そういえば前に何かの記事で、あなたがスレイヤーをフェイヴァリットに挙げているのを見たのですが。
「ああ、確かに(笑)。しばらく聴いてないけど、昔はずいぶんメタルを聴いてたから。グランジにハマる前に、メタルを聴きまくった時期があったんだ。スレイヤーとか、メタリカとか、夢中になって聴いてたよ。初期のスレイヤーは、ほんとにすごかった。むちゃくちゃ邪悪でね。でも、今どんなものをやってるのかは知らないんだ。いいのかもしれないけど(笑)」

●では、ライトニング・ボルトのサウンドで欠くことのできない重要な要素、あるいは音作りやライヴで演奏するうえでもっとも大事にしていることは何ですか?
「そうだね、まず、僕たちが曲を書くときは、とにかく楽器を弾いてみるところから始めるんだ。今、こうやって話してる隣の部屋にもドラムが置いてあるから、その気になればいつでも始められるし、他の人の手を煩わせる必要もない。で、そうやって弾いたものを録音して、聴き直しながら曲を作っていく。もちろん、最初から使えるものばっかりってわけにはいかないけど、聴いていく中で、これはいい、これはダメだって判断しながら、いいものをピックアップするんだ。そうやってある程度まとまると、一度ライヴでやってみて、出来を確かめる。僕たちにとっては、そうやってライヴの場で曲を試すことはすごく大事なんだ。もしそれでダメなら、その曲はボツになる。僕たちが大事にしてるものは2つあって、ライヴでパワーが伝わるものっていうのが1つ、あとは、前とまるっきり同じものの繰り返しではないっていうのがもう1つなんだ。これがけっこうキツいんだけどね。僕たちもバンド始めてからかなり経つし、何しろ二人しかメンバーがいないわけだから、山ほど選択肢がある、とは言えない状態になることもけっこうあるよ。つい、前にやったのと同じアイディアが頭をよぎることもしょっちゅうだし。それでも、ほんのちょっとでもいいから、確実に前に進んで行こうとはしてる。だから、どのアルバムも、もちろん似たところはあるだろうけど、それぞれに新しい方向性もあると、僕は思ってるよ。大変だけどね。でも、僕がこんなこと言うと『えっ』って思われるかもしれないけど、一番大事にしてるのはどこかで『ロックであること』なのかもしれないな。まあ、僕なりにではあるけど、すごく大切なことではあるよ(笑)」

●では逆に、ライトニング・ボルトにとってタブーとは?
「タブーかぁ。うーん、ちょっと考えるね……もう一人のブライアンは、また違う考えかもしれないけど、僕はこういう、独特のドラム・スタイルだから、ライヴにせよ、練習にせよ、終わったときにはくたくたに疲れきるくらい、充実したものじゃないといけない、っていう気持ちはあるね。だから、100%を出し切れない曲は苦手というか、ミニマルな曲だと、あんまり工夫のしようがないんだよね。そこがライトニング・ボルトの難点とは言えるかな。あと、僕もベースのブライアンも、どうもやりすぎるところがあって。一歩引いてみるとか、控えめにするとか、そういうことがタブーなのかもしれない(笑)。でも、自分ではよくわかんないところもあるし……タブーって……たぶん、きっと本当はけっこうたくさんあるんだろうけど、自分では気づいてないだけなんじゃないのかな。いかにも、っていうロックな曲はあんまりやらないけど、まったくないわけでもないし。今度のアルバムなんて、カントリーっぽい曲まであるくらいだからね。カウボーイが出てきそうな(笑)。あとは、もう一人のブライアンは前、ちょっとヴォーカルをとってたけど今はやってないとか……そんなところかなあ」

●わかりました。変な質問ですいません。
「いや、変わった質問の方がいいよ。頭使うし(笑)」

●では、ライトニング・ボルトのサウンドが、奇抜なだけの実験音楽や、単なる「電気楽器によるフリー・ジャズ」に堕することなく、ユーモアと愛らしさとカタルシスに満ちあふれたポジティヴな音楽となり得ている、その秘訣は何だと思いますか?
「うーん、それって、僕たちの音楽に邪悪さが足りないってこと?」

●いえ、そうではなく、即興音楽やフリー・ジャズのような変な堅苦しさや敷居の高さがなく、むしろ聴いた人をつい惹き付けてしまうような、オープンな魅力があるということなんですけど。
「ああ、そういうことか。確かに、僕たちの音楽には、どこか喜びに溢れたところもあるとは思うよ。音楽のすばらしさだけではなくて、生きていることそのものを祝福するような感じというか。ある意味、今、君が言ってくれたようなところがあるから、僕たちは他のバンドとはひと味もふた味も違った音楽がやれてるんだと思う。メタル・バンドのようでもあるけど、あそこまでおどろおどろしくはない。アバンギャルドやジャズにも通じるところはあるけど、あそこまでガチガチのテクニック重視でもないっていう。僕たちの場合は、アイディアを思いついて、いったん形にしたら、あとは演奏していく中でどうやってぶっ壊すか、っていうのをいつも考えるからね。曲だって生き物だから、ライヴのなかで曲を生かしていくには、いつもそんなにオリジナルの形にこだわるわけにはいかないし、そこでこそテクニックっていうのがほんとにものを言うんじゃないのんかな。僕たちはいろんなジャンルの音楽の要素をこのバンドにぶち込んでいるけど、どのジャンルかっていうのがはっきりしないくらい溶け合ってくれるっていうのが、究極の目標なんだ。僕たちにほんとの意味でテクニックがあって、うまくいったら、もとは何だったのかもわからないようなものが生まれるんじゃないかと思うんだけど。って、これで答えになってる?」

●ええ、わかります。
「あと、エンターテインメント、っていう言葉はあんまり使いたくないんだけど、やるからには楽しくないとっていう気持ちもあるしね。退屈なものなんて、やる意味ないから。まあ、聴く人によっては僕たちの音楽もたぶん退屈だろうけど(笑)。でも、いわゆるアバンギャルド的なものや、メタルへの反発も、少しは入ってるとは思う。なんか、生真面目すぎるのもどうかなって。もちろん、僕たちだって真面目にやってはいるけれど、楽しくやるっていうのは、一番大事なことの1つだよ。あんまり真面目にやりすぎると、ダークな世界に足を突っ込んでしまいそうで」

●なるほど。それと、そのシンプルなスタイルから、誰でも真似できる、単純でイージーな音楽だと勘違いされることもあるかと思いますが……。
「そうだね(笑)」

●では、これぞライトニング・ボルトならではというオリジナリティや、モットーなりテーゼというのは何だと思いますか?
「うーん、確かに僕たちの曲にはシンプルなものもあるけど、今はもう、これしかできないってわけじゃなくて、シンプルにしようと決めてやってることだから。こうなるまでにはいろいろあって、前はもう少し、テクニック重視だった時期もあったんだけど、今はそういうところからはまた離れつつある。ま、もしかしたらだんだんバカになってるだけのかもしれないけど(笑)。でもひとつ言えるのは、僕たち二人はこれだけ長い間一緒にやってきたぶん、バンドの結束がすごく固いってことだね。たぶん、他の人でも僕たちの曲はできるだろうし、すごく上手に弾きこなせるだろうけど、僕たちがやることで、曲に締まりが生まれるんだと思う。タイトだけど、パワーが炸裂するような。今は、二人で演奏しているとお互いの心が読めるような気になることさえあるくらいなんだ。それだけ、一緒にやってきた時間が長いからね。たぶん、どのバンドでも長くやってればそうなってくるものだろうけど、二人しかいければ、メンバー同士の距離がいっそう近くもなる。世界で一番タイトだ、なんていうと大げさだけど、こういう構成でこういうサウンドをやってるバンドは、ゼロではないにしても滅多にないぶん、そういうお互いの関係が他のバンドとは大きく違うところかな」

●では、敢えて自分たちの音楽を言葉で表現するなら、どうなりますか?
「ええと……難しいね(笑)」

●だとは思いまずが、ぜひ。
「たぶん、ベースのブライアンに訊いたら、また違う返事になるだろうし……さっき、すごくタイトだって言ったばかりなのにこういうことを言うのも変だけど、二人で演奏しているとき、お互いに感じてることはまったく違うと思うんだ。同じ曲をやってるけど、それぞれがやってることはぜんぜん違うしね。まあ、二人とも激しいけど。で、僕にとって、音楽って言うのは、肉体性を讃えるものなんだ。ヘンで、やかましくて、ノイズばりばりで、速い音楽で、肉体を実感するっていう。でも、もう一人のブライアンにとっては、やかましくて、ノイズばりばりで、速い、頭を使った音楽ってことになるかもしれない。ベースを弾いてるから、ドラムを叩いてるのとは違ったことを考えてるんじゃないかな。僕はせいぜい、いろんなものを叩くしかできないけど、ベースだともっといろんな技法があるからね」

●実は過去に2回、僕はライトニング・ボルトのライヴを日本で見たことがあるのですが、あの悪魔的ともスラップスティックとも言えそうなすさまじい熱気と爆発的なエモーションは、いったいどこから生まれてくるのでしょうか? 
「うーん、僕にも時々わからなくなるんだよね。たぶん、むちゃくちゃ緊張するから、そのぶん逆ギレみたいになってるんじゃないのかな。まあ、そればっかりじゃないけど、そういうところは確実にあるよ。ほんと、自分でもよくわかんないけど、僕なんて極端に落ち着きのない性格だから、それもあるのかな。僕はそれが体の動きに出る方で、ベースのブライアンはものすごい勢いで考えるって方向に出てるんだよね。で、その二人が一緒に演奏すると、ほんとに誰にも止められないものになるっていう。それに、ライヴだとお客さんからもエネルギーをもらえるから、さらにこっちもパワーアップして、またそれをお客さんにぶつけるっていうのもあるし。ほんと、ライヴの出番が来ると、めちゃくちゃテンションが上がるんだ。いつもこのライヴが最後だ、っていうくらいのつもりでやってる。だから最高のものを見せないとって、ステージに立つたびに思うよ。ほんとに激しく演奏していると、何かを突き抜けて、あり得ないことが起きたりするんだ。地球が震えて、どこか秘密の扉が開いたりするような感覚というか、とてもこの世のものと思えないよ。全力で演奏しているときにだけ、魔法が訪れるんだ。そういう、自分の100%を出し切るんだっていう気持ちは、二人とも持っていると思う。それが、エネルギーのもとかな。あと、おいしい食事と(笑)」

●なるほど。さて、最新作の『ハイパーマジック・マウンテン』ですが、演奏のヴォルテージやテンションの高さ、スピード感、カタルシスとも、これまでの作品の中で最高到達点を刻む作品だと思います。
「ほんとに? うれしいな」

●と同時に、とてもポップなアルバムだなあという印象も受けたのですが、自分たちではどんなアルバムに仕上がったと思いますか?
「我ながら、すごく気に入ってる。アメリカでは明日が発売日なんで、そろそろレコード評も出てきていて、僕もいくつか読んだけど」

●評判はどうですか?
「うん、いいって言ってくれてる人が多いかな。まあ、なかには、特に進歩がないっていう評もあったけどね。僕自身は、今までで一番、ライヴに近いものができたかなと思ってる。僕たちのライヴは、たいてい60分くらいだから、今度のアルバムも、それとほぼ同じ長さにしたしね。そうやって、ライヴの感じをできるだけ伝えようとしたんだ。ライヴと同じように、流れを作り出したかった。最初はわりに取っ付きやすいんだけど、だんだんヘンなものが増えていって、聴き終わるころには、不思議な世界にどっぷりはまって、もう抜け出せなくなるような。まあ、そういうことはどのアルバムでも考えるんだけど、今度のアルバムはそういう『旅』みたいな感覚が、今までにも増して強い気がする。長めだし、僕たちと一緒に旅をする感じが出せたかなと思うよ。でも確かに、ポップな曲もある。とくに最初の何曲かは、今までよりもさらにポップかもしれない。これまでも何曲は必ず、ポップな曲は入れてきてた、って言ってもあくまで僕たちの考えるポップ・ソングだけどね。別にポップなものを目の敵にするつもりはないけど、かといって全面的に受け入れるつもりもないんだ。ポップなものと、何のまとまりもない大混乱の間のどこかで、僕たちなりの着地点を見つけたいと思ってる。とにかく、気に入ってもらえて嬉しいよ」

●ところで、ちょうど2000年代に入るのと前後して、ライトニング・ボルトをはじめ、ニューヨークだったらブラック・ダイスやアニマル・コレクティヴだったり、西海岸だったらヘラやディアフーフやイレース・エラッタだったり、アンダーグラウンドで活躍する同世代のバンドやミュージシャンがぐっと台頭を始めた印象があります。
「そうだね」

●その背景には、何かしら必然性や因果関係のようなものがあったと思いますか?
「うん、だと思う。だいたい、90年代後半って、音楽シーンがほんとに低調だったんだよね。僕の住んでるプロヴィデンスなんかはまた違ったけど。でも、世界中からいいバンドが出てきて、いい音楽が溢れてるような状況だったら、わざわざ自分がやろうっていう気にはならないと思うんだ。だから、君が名前を挙げてくれたようなバンドは、たぶん90年代の半ばか後半、あんまりいいバンドがいない時期に始めたのが多いはずだよ。大きなムーヴメントとかもなくて、誰も面白そうなことやってない、じゃあ自分がやってやるっていうような感じだったんじゃないかな。で、ある程度活動を続けていくなかで、ちょうど同じくらいの時期に世に知られるようなったっていう。みんな、いいバンドで、お互いやってることはまるっきり違っていても、どこか通じるところが確かにあるね。音楽に、芸術的な要素を持ち込んでる、そのやり方が近いのかもしれないね。でもほんと、今はいい時期になったなって思うよ。まあ、また突然暗黒時代に入っちゃうかもしれないけど。こういうのってサイクルがあって、いい時期の後には悪い時期が来るものだし」

●こうしたバンドと、共有するヴィジョンなりアティテュードのようなものがあると思いますか? たとえば音楽性は違えど、どこかしら同じものを目指している、みたいな。
「そうだね、何かを共有しているのは確かだと思う。ブラック・ダイスとはいい友達だし。メンバーに、同じプロヴィデンスのアート・スクールを出てるやつが多いから。でも、今たどってる道はお互い全然違うよね。ブラック・ダイスは一度にいろんな方向を目指す、みたいなやり方をしてるし。あと、アニマル・コレクティヴはすごいバンドだと思う。こっちも向こうもブラック・ダイスと友達だから、ニューヨークに行くと会ったりするよ。メンバーと個人的な付き合いがあるわけではないんだけど、ほんと、尊敬してる。あとこれは、日本のノイズバンドにも感じるんだけど、美学を追求していくなかで、精神性に立ち返る動きがあるんじゃないのかな。ただそれは、ほんとに心の底から精神性に回帰してるというよりは、音楽のスタイルを突き詰めるなかで、そういう形になっていってるというか。今は、そういう意味で通じるものを持っているバンドがすごく多いね。僕たちにもそういう要素を感じてもらえればいいなと思ってる。自分たちの可能性をできるだけ突き詰めることで、君がさっき言ったような、カタルシスを得られるような経験に至れれば、言うことないよ。音楽と自分が一体化するような、そういう感覚だよね。もう長いこと、ある程度以上有名なバンドにはそういう体験は期待できない状態が続いてきたけど、またみんな、そういうスピリチュアルなものを求めるようなってきたんじゃないのかな。もちろん、みんなやってる音楽はそれぞれ全然違うけど、精神的美学と言うか、そういうところで、お互いをつなぐものはあると思うよ」

●なるほどね。
「ただ今のは、東海岸のバンドに限った話だよ。イレース・エラッタとか、僕は大好きだけど、とくに共通点は感じないな。カリフォルニアはまた、事情が違うだろうし、僕には向こうのことは説明できないよ。天気も違って、まるで別世界だから」

●わかりました。では最後に、ライトニング・ボルトとしての今後の野望、最終的な目的っていったら、何ですか?
「うーん……。そんなものはない、かもしれない。最初、バンドを始めたときから、まあ、ライヴをやりたいくらいのことは思ってたけど、それ以上でも以下でもなかったくらいだし。一回ライヴやったらその次、レコード出したらもう一枚って、そのくらいだったよ。もともと、気軽に始めたものだったしね。地元のプロヴィデンスのコミュニティー向けにやることしか考えてなかったし、僕たちの周りの人たちは、世界一だって思ってたから。そういう人たちに聴いてもらえれば、それでよかったんだ。ツアーでいろんなところに行くうちに、そういう気持ちも変わってきたけど……ただ今でも、変な話だけど、自分たちの家や、練習場所に夜に集まって、好きなだけ演奏する、それが自分たちの最終的な目的だ、っていう気がするんだよね。あの場所で、ものを創りあげていく、その体験が僕たちにとっては目標なんだよ。もちろん、前よりアルバムが売れたり、ツアーでいろんなところに行って、日本にまで足を運べたのは嬉しいことだけど、それが目標かっていったら、違うと思う。僕たちにとっては、これからも新鮮な音楽を作り続けることが目標だから」

●今、日本の話が出ましたけど、来日の予定などはあるんですか?
「うん、来年の春になると思う。3月か、4月くらいかな。日本はツアーでも最優先する国だから、間違いなく行くよ(笑)」


(2005/12)


極私的2000年代考(仮)……“騒音”の愉悦)

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