2014年3月30日日曜日

2014年の熟聴盤③

・ Neneh Cherry/Blank Project
・ 伴瀬朝彦/カリハラ
・ Swans/To Be Kind
・ Love Cult Take Druss/Yr Problems
・ Millie & Andrea/Drop the Vowels
・ The Pains of Being Pure At Heart/Days of Abandon
・ 朝生愛/Lone

2014年の熟聴盤①)
2014年の熟聴盤②)

2014年3月16日日曜日

告知⑩:監修シリーズ〈Signs and Symptoms〉



シリーズ11弾は、昨年リリースされ数多のメディアから称賛されたビル・キャラハンのアルバム『ドリーム・リヴァー』を自ら丸ごとダブ・ミックスした『ハヴ・ファン・ウィズ・ゴッド』
Bill Callahan/Have Fun With God
(特典も付く?付かない?とか……)

オリジナル作の評価が高かったぶん、ファンの間でも評価が分かれるところがあるかもですが、ただの遊び心ではない、70年代ジャマイカのルーツ・ダブへの愛とリスペクトを全身全霊で賭した渾身の一枚――ぜひご堪能あれ。

次回リリースの12弾も、かなりドープなのが決まっています。
近々発表されるかと思いますが、こうご期待。

ちなみに、同シリーズではありませんが、拙稿解説のこちらもぜひ。
Linda Perhacs/The Soul of All Natural Things

過去のリリースは以下。

http://junnosukeamai.blogspot.jp/2014/01/signs-and-symptoms.html
http://junnosukeamai.blogspot.jp/2013/12/signs-and-symptoms.html
http://junnosukeamai.blogspot.jp/2013/11/signs-and-symptoms.html

2014年3月4日火曜日

極私的2010年代考(仮)……Black DIceは転がり続ける



本作『ミスター・インポッシブル』は、2009年の『Repo』に続く6作目のスタジオ・アルバムになる。前作から約3年というブランクは、多作を誇る彼らにおいてじつは最長のものとなるが、もちろん、彼らは活動の手を休めていたわけではない。その間も彼らはツアーやフェスへの出演で世界中を周り、たくさんの数のライヴをこなしてきた。そして、メンバー個々の活動も旺盛で、音楽に限らず映像やアートにいたるまで多岐にわたる。なかでも、エリック・コープランドはソロ名義のリリースを活発化させ、複数の7インチやEPとともに、昨年の『Waco Taco Combo』を始め3枚のアルバムを発表。また、今年に入ってからも7インチ『Car Alarm』を、ノー・エイジのディーン・スパントが運営する「PPM(Post Present Medium)」からリリースするなど、この3年間は彼らにとって多忙を極めた時間だったといえるに違いない。



本作『ミスター・インポッシブル』は、本国では名門「Domino」の北米支部が傘下に置くサブ・レーベル「Ribbon Music」からリリースされる。「Ribbon Music」は昨年ジョン・マウスやローラ・マーリングのアルバムをリリースした、まだ設立間もない新興レーベルだが、もっとも彼らはこれまでも様々なレーベルからリリースしてきた実績を持つ。今年で結成15周年を迎える彼らだが、その間彼らは、「Gravity」「Troubleman Unlimited」「American Tapes」「Tigerbeat6」「DFA(※UKはFat Cat)」、アニマル・コレクティヴが主宰する「Paw Tracks」と、錚々たるレーベルを渡り歩いてきた。その上さらに、前述の「PPM」も含めてそこに並ぶ名前はいずれも、彼らの15年間――つまり90年代の終わりから2000年代を通じて現在にいたるまで、インディ・ミュージック/アンダーグラウンド・シーンを牽引し続けた重要なレーベルである。そして事実、彼らのディスコグラフィーとは結果的に、この15年間におけるレフトフィールドな音楽表現の変遷を捉えたドキュメントにほかならない、といえるだろう。


アニマル・コレクティヴやライトニング・ボルトといった盟友関係と呼べるバンドとともに、ローファイやスカムからUSジャンクやジャパニーズ・ノイズまで貪り尽くした、『Number 3』を始めとするファストでハーシュな最初期の作品群。一転、10分を超えるロングセットを組み、スロッビング・グリッスルやホワイトハウスもかくやたるノイズ・アンサンブルをドラッギーなサイケデリアでくるんだファースト・アルバム『Beaches and Canyons』。ノイ!やクラスター等のクラウト・ロックを掘り起し、音響エレクトロニカやドローンと接合を試みたアブストラクトなセカンド・アルバム『Creature Comforts』をへて、アシッドなエレクトロニクスとノイズ/サウンド・コラージュが極彩色に溶け出したカオティックでユーモア感覚満載のサード・アルバム『Broken Ear Record』。カートゥーン・ミュージックを思わすスラップスティックな遊戯性が、ミニマルだが過剰で果てなきループとエレクトロニクスのアマルガメイションを繰り広げた前々作『Load Blown』。そして、野放図のようなサウンド・エクスペリメントの背後に、2000年代後半のブルックリンとアラン・ビショップ(サン・シティ・ガールズ)の「Sublime Frequencies」を結ぶトライバルな嗜好、さらにはフライング・ロータスやLow End Theory周辺とも共鳴するビートやエディット感覚といった同時代的な参照点も窺わせた、強烈にドープな前作『Repo』。他にも数々の7インチやEP、リミックス・ワークを始め、彼らはリリースの度にユニーク極まる独創的なヴィジョンを提示しながら、しかし作品同士には文脈を補完し合うような関連性があり、時間軸に沿った変化や深化の足跡がそのディスコグラフィーには刻まれている。また、それぞれの作品は、並行するメンバー個々の活動や、あるいはエリックがアニマル・コレクティヴのエイヴィ・テアと始めたテレストリアル・トーンズといったユニットを通じて樹形図の枝葉を広げてきた彼らの創作(※サウンドのみならずアートワークやPV等のヴィジュアル・コンセプトも含めた)における段階的な集約点をその都度示してきたといえる。それはまさに量が質を生むがごとく、作品を重ねるごとに濃縮されたエッセンスが、新たな源泉として反芻され次の作品へと連鎖を導く――そんな永久機関のようなサイクルを、ブラック・ダイスという生態系は想起させるようだ。
 




さて、本作『ミスター・インポッシブル』についてだが、先行公開されたリード・シングル“Pigs”――スーサイドも連想させる無機質なビート&ベース・サウンドが印象的なブラック・ダイス流ブレイクコアと呼べそうなナンバーにおいて、まずは本作のひとつの特徴が示されている、といえるかもしれない。

エリックは完成直後の最新のインタヴューに応えて、その中で今回のアルバムについて「いくつかの点でパンク・バンドっぽい」と語っている。そして制作工程に関しては、「プログラミングは控えめ」で、より「手作り感がある」と説明していた。もちろん、“パンク”というのは彼らなりのたとえであり、それでもプログラミングされたサウンドは多用されているわけだが、基本として今回はシンプルなアプローチを心掛けたのだという。そうした背景には、いわく昨今のインディ・シーン/アンダーグラウンドで日常化した感のあるディレイやリヴァーブ・サウンド、あるいはドローンに対する嫌悪感があったようで(※「そうした“要素”は好きなんだけど」と断りつつも)、その反動がよりダイレクトで“パンク”なスタイルへとエリックを向かわせたらしい。

そして実際、エリックが語るとおり本作は、たとえば複雑に練られた構築性とサイケデリックなポップ・センスを誇った前作『Repo』と比べると、とくに前半に関していえば、それこそライヴ・セットも思わせるロウでラフな手触りが際立っている。“Pinball Wizard”のレジデンツ的ユーモア精神とブレイクビーツのシャッフルや、“Rodriguez”の人を食ったようなループとチップチューンを意訳翻案したようなエレクトロニクス。さらに“The Jacker”のブギーなベースから唐突なバングラ・ビート~エスノ・ファンク調。独自のカスタムメイドが施されたサンプラーやペダル、アナログ・シンセが繰り出すサウンドはどれも一筋縄ではいかないものばかりだが、そこには近作とは趣を変えたハードコアなテンションや即興的なノリが感じられておもしろい。それはまたエリックが最近のソロ・ワークで披露するドープなコラージュ・センスとも異なる。あるいは、タイトルがジョン・ゾーンの爆音ジャズ・アルバムを連想させる“Spy Vs. Spy”には、流行りのチルウェイヴやヒプナゴジック・ポップに対する諧謔精神に満ちた返答らしきものも窺える(※ちなみにエリックは自身の音楽もまた“hypnagogic(睡眠誘発)”と評されることがあることについて「バカげてるし、その手の音楽についてはまったく知らない」と一笑に付す)。彼らはその15年間のキャリアを通じて、最初期のノイズ・パンクからエレクトロニックなスタイルへとサウンドを徐々に変化させてきたといえるが、なるほど「手作り感」というか「手弾き感」にも溢れた本作は、彼らの中でどこか原点回帰的な意味合いも持った作品なのかもしれない。




レーベルからの資料の中でインタヴューに答えたメンバーのアーロン・ウォーレンは、「ブラック・ダイスを再発明すること(Reinventing Black Dice)」が本作の重要なテーマだったと語っている。そのためには強力な曲を書き上げ、それらをアルバムというかたちにまとめ、かつオーディエンスと共有できるようなものにすることが大事だったという。それはおそらく、先のエリックの発言とも関わるものだろうが、しかし、このことは本作がこれまでのスタイルの転換やディスコグラフィーと切り離されたものであるということを意味するものではない。むしろ、まさにマニュアル操作によってサウンドのフォーカスを絞り直すことで、ブラック・ダイスのらしさや醍醐味はより露わにされたような印象を受ける。それは“Pigs”を始めすでに触れたナンバーもそうだが、“Outer Body Drifter”のガジェット感満載のミュータント・ファンクや、“Shithouse Drifter”の譫言を繰り返すようなアナログ・シンセのオノマトペ、あるいは、まるでシルヴァー・アップルズ・ミーツ・チョップド&スクリュードのような“Brunswick Sludge”もまた然り。さらには、かつての“Endless Happiness”や “Creature”も彷彿させる“Carnitas”の引き延ばされた持続感――背後にはハドソン・モホークやラスティといったウォンキーの反響やサン・アロウのサイケデリックなダブ、それこそジェームズ・フェラーロにも通じるヒプノティックな感覚も聴き取れる――などは、やはり彼らならではの境地のものだろう。今回の楽曲はどれも、事前にライヴ・セットで試され練り上げられた末にレコーディングされたものだそうだが、そうしたプロセスの選択も、「再発明」という本作のテーマとおそらく無関係ではない。そしてそれらのもろもろが、結果的にブラック・ダイスという特異性をあらためて浮き彫りにしたという点において、本作はこれまでの方法論を推し進めながらディスコグラフィーの延長線上に新たに駒を進めた作品、と位置付けるのがふさわしいだろう。





海外でのリリース・タイミングに合せて行われるブルックリンでのショウを皮切りに、彼らは広範囲を周るUSツアーを敢行。最近は移動中や移動先での機材トラブルを考慮して、必要最低限の機材のみ持ち運んでライヴが行われているそうだが、今回の『ミスター・インポッシブル』は、そうしたある種削ぎ落とされた演奏の賜物として生まれた面もあるのかもしれない。はたして今回のツアーやライヴも、さらなる新たな楽曲が試され披露される場となるのか。実現すれば2003年以来となる来日公演の知らせとともに、新たな報告を期待して待ちたい。


(2012/03)

2014年3月2日日曜日

2014年3月のカセット・レヴュー(随時更新予定)

◎Brannten Schnüre/Aprilnacht
まとめてリリースされた〈Sic Sic〉の中から一本。BRANNTEN SCHNÜREとAGNES BEILのふたりによって録音された、まるでヴェルナー・ヘルツォークの映画を思わせる厳粛なドローン・アンビエント。

◎Bass Clef/Acid Tracts E.P.
「ヘ音記号」を名のるUK(?)のビートメイカー。モジュラー・シンセを弄りアシッド・ハウスのモーフィングを重ねる。エスノな感覚も併せ持ち、LAのAhnnuっぽい展開もあったり、なかったり。



◎Gimu/Countryside Summer Nightmares
ブラジルのレイム。そう頭に浮かんだイメージがなかなか離れなかったが(サンクラに上げられててあ音源の方がそれっぽいが)、とにかく広がるのは漠とした漆黒のサウンドトラック。“田舎の夏の悪夢”ってタイトルもまさに。

◎Blue Christ Track/Traps
ジャケットに映るのは妹なのか姉なのか。米郊外のベッドルームで日夜誰かが掻き鳴らすローファイ・フォークの、その大勢の中の一風景。別のカヴァー作品で聴いたダニエル・ジョンストンのカヴァーも染みた。

◎Hobo Cubes/Mono Music Vol​.​
モントリオールに樹勢するホームグロウン(自家栽培)・ノイズ。底流するドローンやアンビエントの中にダンスへの欲動も滲ませた、アルバム一本を通して美しい起伏を感じさせる構成。多作ではあるがけっして衝動的ではない。曲のタイトルにもコンセプチュアルな姿勢が感じられる。

◎C L E A N E R S/REAL RAGA SHIT VOL​.​1
存在感を増す〈Bootleg Tapes〉から。リゾートか秘境か現地録音のフィールド・レコーディングスをゆるやかなアンビエントでくるんだような前半から、後半はクリスチャン・マクークレイも彷彿させるカットアップ&コラージュへと移行するスムースさ。ループと逆回転を執拗に繰り返すB面もかなり頭がおかしい。。

◎Bobb Trimble/The Flying Spiders in Brooklyn
近年の再評価も記憶に新しいアシッド・フォーク・シンガー。2009年に録音されたライヴ音源。サーストン・ムーアからアリエル・ピンクまで数多寄せられるリスペクトの声。去年フォーク・アルバムを出したタイ・セガールもきっと賛辞を惜しまないひとりのはず。

◎drainbow//​/​/
フェニックスの〈Tagobella〉から。13thフロア・エレヴェイターズやホークウィンド直系の、というほどヘヴィでもなく少々ライトなインストゥルメンタル・ストーナー・ガレージ・ロック。

◎BLACK KASPAR/SCHIZO​-​TECH
ルイヴィルの〈Seepage〉から。そういえばマジック・マーカーズも最初ルイヴィル出身という情報だったけど、第一印象はこんな感じだったような。ベースとドラムを中心としたインプロにサックスやテルミンやらが絡みつくジャンク・サウンド。ローファイ=90年代リヴァイヴァルの後にはジャンク=80年代末リヴァイヴァルが……来るわけない。けど、ポスト・インダストリアルっていってしまえば2000年代に流行ったあれとは形を変えた80年代リヴァイヴァルの一形態ですよね。

◎Angelo Harmsworth/Fluxus Rainbow
個人的には〈Bathetic〉からのリリースでお馴染みのアンビエント作家。夜明け直前の空を写したような美しいグラデーションのジャケット。おだやかに広がるアンビエントの情景と、タイトルに冠せられたフルクサスとの間に何か関係があるのだろうかそれは知らない。

◎Rug/All Neck / Get Plished
と、同じ〈Patient Sounds〉から。チョップド&スクリュード、ヴェイパーウェイヴ、カットアップ&コンクレートでスキゾでモンドに戯れるサウンドは〈Bootleg Tapes〉にこっそり紛れ込まれても違和感なさそう。

◎Téléphone Maison/Toujours Partout
モントリオールの〈Not Not Fun〉こと某レーベルを主宰するYlangYlangもシンセを弾いているヴォーカル入りのダブ・アンビエント。辺境ものも忍ばせた目配せは、ありそうでなかったギャング・ギャング・ダンスの浮女子ヴァージョン、といった場面も。

◎PHORK/American Tao
〈NNA Tapes〉や〈Opal Tapes〉からもリリースがあるLAのNeil Reinaldaによるプロジェクト。「slow-rave」を謳う(名義?)ミニマル・テクノは、数多のミックス・テープから受ける印象とは裏腹に抑制されていて、LAビート・シーンとシンセ・ウェイヴの邂逅を示すひとつのサンプルとして興味深い。サウンドを聴けばUSのアンダーグラウンドのみならずUKでも支持を広げている理由がわかる気も。しかしミックステープで見せる表情はまったく異なるのな。https://soundcloud.com/jux-ta-pose-org/juxtape-033-phork

◎Croatian Amor/Vagina Sword
最近した大きな後悔といえば、2月に来日していたウォー(Vår)とラスト・フォー・ユースのライヴを観逃したことで、というのも、個人的にいま最も気になる場所のひとつがデンマークのコペンハーゲンだから。近年におけるコペンハーゲンの新星といえばアイスエイジが筆頭に挙げられるが、正直サウンドに関してはあまり惹かれなかったのだけど、彼らがジンを作るなどした地元のDIYなユース・カルチャーの吹き溜まりから登場したという話を何かでチラ読みして以来、同地の音楽シーンのことが密かに気になっていたのだ。ちなみに、ウォーはアイスエイジのエリアス・ベンダー・ロネンフェルト(Vo)と、コペンハーゲンのアンダーグラウンド・シーンの旗艦レーベル〈Posh Isolation〉を主宰するローク・ラーベックがメンバーの4人組で、ラスト・フォー・ユースは新加入したロークが片割れのデュオ。そして、エリアスとロークによるプロジェクトが、このクロアチアン・アムールだ。耳障りなアンビエント、オブセッシヴな性愛のイメージ、モノローグ、こと切れたノイズ……まったくもってタイトルもタイトルだけど、彼らの作品の多くはインナースリーブに「Croatian Amor is 1989」と記されているといい、つまり、ユーゴスラビア統治下の社会主義共和国時代のクロアチアと絡めた何らかのメッセージがそこには仄めかされている、のかもしれない。「死の工場からの音楽」と謳われたのはスロッビング・グリッスルだったが、クロアチアン・アムールもまた、その音楽はどこか陰惨で退廃的な原風景を想起させるものだろう。
(※転載・一部改)

◎Circulation Realms/Mask
オースチンの〈Marmara〉から。平衡感覚を失わせるようなシンセ・アンビエントと甘いソウル・ポップが半ば確信犯的に交錯。サウンドはコンポーズの意識を感じさせ、不思議と間延びしたところはなく、かといって表現したいことがあるようにも思えないという、やはり匿名性の高い音楽なのだけど、凝ったアートワークからも窺えるように、プロダクトとしてのこだわりは強そうだ。

◎ARIZONA/NEW YORK
「お気に入り」に入れておいたBandcampを久しぶりに訪れると、思わぬ掘り出し物に巡り合うことがある。アメリカのカセット専門〈Magic Rub〉から今年初のリリース。もっと宅録系のイメージがあったが、〈100%Silk〉系のシンセ・ハウスとコールド・ファンクが相半ばした、とても今っぽい一本。

◎Taiga/The Coriolis Effect
ピッツバーグの〈VCO〉から。元アイシスのBryant Clifford Meyerによるドローン・アンビエント。轟音メタリックなイメージとは非なる、霊妙な気配が支配したシークエンス。奈落からの、穏やかなる浮上。

◎YlangYlang/Tender Freaky Sexy Moments
モントリオールのアマンダ・ブラウンによるカヴァーEP。ジャネット・ジャクソンやマライア・キャリーなどなど。この人、徹底して投げ銭の姿勢を貫き続けているけど、下手に音楽で生計を立てるという考えを持っていない人なのかも。スウィート・チルなシンセR&B。

◎Charles Barabé/Empreintes
モントリオールの〈Software〉…と呼びたいところだが、そこまでは。けれどここ、〈Jeunesse Cosmique〉が有能なシンセ・ウェイヴの原石を抱えていることは間違いなく、定点観測し続けたいレーベルのひとつであることは間違いなく。

◎CASK/CASK
ついに(?)アナログ・リリースされたImperial Topazの新作も素晴らしかった〈Tranquility Tapes〉から。Chris Gowers (Karina ESP), Alex Smalley (Pausal, Olan Mill), Simon Bainton (Pausal), and Katie English (Isnaj Dui)によるUKのドローン・ユニット。

◎New Balance/Formes De Viure
すっかりブランドを確立した感もある〈Exo Tapes〉。実際のところはクオリティにバラつきがある感も否めないような気もするが……今のところの最新作。曲タイトルの通りギター・ドローン~アンビエントで押し通すA面に対して、曲のタイトルの通りヴォイス・サンプリングらしきものをコラージュさせながらぶくぶく、ぐつぐつとした戯れを続けるB面。うーん、、、

◎Alcahest Libations/Luculent Scripture
ワルシャワの気鋭レーベルから。探せば、というか探さなくても異才鬼才の類いはネット空間にゴロゴロ存在している。インダストリアルと土俗とシンセ・ウェイヴの魔術的混淆。たとえるならシャクルトンとホーボー・キューブスが手を組み〈L.I.E.S.〉からリリースするような……。

◎Dura/Silver / Lawns
同じくワルシャワの〈Wounded Knife〉から。アメリカ合衆国中部大西洋岸の温暖な気候のイメージにインスピレーションを得た、らしいギター・アンビエント・デュオ。というかこのレーベル、アートワークが好み。

◎AyGeeTee/Eternity's Conceit
ささやかなマイブーム中の〈Reckno〉フロム・UK。開口一番、「Endless rolling modern dance music…」と銘打たれているが、肝要なのはやはりこの持続感なのだと、本作を聴きながら体感する。中空をゆっくりと旋回するようなドリーミーな音響の中、テック・ハウスとジャズのリズムとギター・ノイズがいつ果てることなく拍を刻み続ける。





2014年2月のカセット・レヴュー)
2014年1月のカセット・レヴュー)
2013年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
2012年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))
極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)