・ Emeralds/Just To Feel Anything
・ Tussle/Tempest
・ Lindstrøm/Smalhans
・ LOVE ME TENDER/SWEET
・ シャムキャッツ/たからじま
・ odd eyes/thinking ongaku union local 075
・ Bat For Lashes/The Haunted Man
・ Godspeed You! Black Emperor/Allelujah! Don't Bend! Ascend!
・ ...And You Will Know Us By The Trail Of Dead/Lost Songs
・ Ellie Goulding/Halcyon
・ スッパバンド/KONTAKTE
・ Jessica Bailiff/At the Down-Turned Jagged Rim of the Sky
・ Sun Araw/Inner Treaty
・ Lightning Bolt/Oblivion Hunter
・ Computer Magic/Computer Magic
・ Pete Swanson/Pro Style
・ Tame Impala/Lonerism
・ People Get Ready/People Get Ready
・ Ty Segall/Twins
・ 骨架的/Reflections
・ Motion Sickness of Time Travel/A Marbled Youth
・ U.S. Girls/GEM
・ Prince Rama/Top Ten Hits Of The End Of The World
・ Yoko Ono, Kim Gordon & Thurston Moore/Yokokimthurston
・ Efterklang/Piramida
(※2012年の熟聴盤⑨)
(※2012年の熟聴盤⑧)
(※2012年の熟聴盤⑦)
(※2012年の熟聴盤⑥)
(※2012年の熟聴盤⑤)
(※2012年の熟聴盤④)
(※2012年の熟聴盤③)
(※2012年の熟聴盤②)
(※2012年の熟聴盤①)
2012年10月30日火曜日
2012年10月9日火曜日
極私的2010年代考(仮)……The Books解散、そしてZammuto始動へ
ブックスで一番残念に思っていることのひとつは、日本で演奏できなかったことだ。ザムートが近いうちに日本へ行って演奏できるよう願っている!
(※極私的2010年代考(仮)……The Books、ラスト・アルバム『ザ・ウェイ・アウト』)
(※極私的2010年代考(仮)……The Books、ラスト・アルバム『ザ・ウェイ・アウト』)
2012年10月6日土曜日
極私的2010年代考(仮)……グリズリー・ベア初来日時の雑談
●昨日の大阪のライヴはどうでした?
エド「すごく楽しかった」
クリス「ああ、最高だったよ」
エド「日本は今回が初めてだし、街を散策したり、初めてのお客さんたち相手にプレイしたり、ほかのゴキゲンなアーティストたちのステージを観ることができたり、楽しいことだらけだよ」
●誰のステージを観たんですか?
クリス「ビヨンセだろ……」
●おお、本当に?
クリス「うん、素晴らしかったよ。あと、ソニック・ユースもよかったし……」
エド「あとニーヨとかソランジュとか、僕らの前にやったテンバー・トラップも」
クリス「うん、あいつらもすごくよかったよね。たぶん、そんなもんかな」
エド「僕はヴァセリンズも観たけど、すごくよかったよ」
クリス「ああ、そうそう、ヴァセリンズ」
●日本のオーディエンスの反応はいかがでしたか?
エド「よかったと思うよ(笑)」
クリス「いつもとはタイプが違ってたけどね」
エド「おとなしいし(笑)」
クリス「そう、反応がうんと静かだった。ビヨンセのステージですらそうだったからね。あのビヨンセだし、“ウォーッ!”っていう反応を予想してたけど、観客が大騒ぎしたのは彼女が登場したときだけで、その後はずっと落ち着いた雰囲気だったよ。アメリカの観客に比べたらもちろんずっと静かだけど、でも悪い印象は受けなかったよ」
●これは何度もいわれていると思いますが、『ヴェッカーティメスト』のビルボード8位の快挙、おめでとうございます。
エド&クリス「サンキュー!」
●まったく予想外の出来事だった? あるいは――実際非常によくできたアルバムですし――“8位になって当然”といった感じ?
エド「まさか!」
クリス「まったくの驚きだったよ」
エド「前評判がいいことは知ってたけど、1週目であそこまで売れるなんて、思ってもいなかったからね。だからホント……」
クリス「ビックリ仰天」
エド「ああ、本当に驚いたし、スーパーエキサイティングだよ」
●『ヴェッカーティメスト』をリリースして以来、バンドを取り巻く状況に何か変化はありましたか?
エド「前よりデカい場所でライヴをやれるようになったし、もっと自分たちの音楽を知ってくれてるオーディエンスにプレイできるようになって、すごく嬉しいよ。しかも、日本みたいにこれまで行ったことのなかった場所にも行けるようになったしね。このアルバムのおかげで、新しい土地でプレイする機会に恵まれたからね。オーストラリアにも初めて行くことになってるし、『ヴェッカーティメスト』のおかげでいろんなことが可能になったのは確かだよ。すごくいい経験をさせてもらってるし、この秋にはさらにクールなプランが目白押しなんだ――ロンドン交響楽団との共演とかね。楽しいことだらけですごくワクワクしちゃうよ」
●『ヴェッカーティメスト』であなた方の音楽に初めて触れたリスナーは、このアルバムのどういった部分に惹かれたんだと思いますか? グリズリー・ベアのどんなところに魅力を感じたんでしょう?
クリス「答えるのが難しいけど、サウンドがクリアなこととか……」
エド「ドラムの音がより前面に出ていてクリアだしね。あと、曲によっては結構キャッチーでポップだったりもするし。でもすべて自然な流れでそうなったんだけどね。だけどアメリカのほうでは、このアルバムを出す前から既に安定したファンベースがあって、今回のアルバムで一晩で人気が出たって感じじゃないんだよ。徐々に、確実にファンを増やしてきたって感じなんだ。しばらく前にファンになってくれた人たちが、僕らのよさを徐々に理解してくれたんだよ」
●『ヴェッカーティメスト』はあなた方の以前のアルバムとは違った雰囲気を持っていると多くの人が思ったと思うんですが、今の話だと、自然な流れで結果的にこういうアルバムになったということですけど、何かまったく新しいものからインスピレーション受けた瞬間があったとか、そういう変化っていうのはあったんでしょうか。
エド「そうだな、4人一緒にミュージシャンとしてすごく成長したというか、成熟したとは思うよ。ずっと説得力のある力強い曲が書けるようになったしね。前のアルバムと今作の間に、レディオヘッドとのツアーとかLA交響楽団との共演とかEPの『Friend』のリリースとか、いろんな素晴らしいチャンスに恵まれて、コンスタントに着実に成長し続けることができたんだ。だから何かひとつの出来事ですべてが激変したっていうんじゃなくて、3年間のいろんな積み重ねの結果なんだよ。あと、アメリカではテレビにも結構出てたしね――深夜のトーク番組とか。だからそう、少しずつ着実にここまできたって感じなんだ……あれ、“クレイジー・イン・ラヴ”が聴こえない?」
(エドとクリス、しばしヴィジョンの渡辺直美に見入り、絶句)
クリス「コメディアンでしょ?」
●(笑)。そうそう、ビヨンセのモノマネをやってるお笑い芸人がいるんですよ、日本には。では、新たにインスピレーションを受けたアーティストなどはいましたか?
クリス「たぶんヒップホップとポップ・ミュージックとR&Bが、今回のアルバムでは一番のインスピレーション源になってるんじゃないかな。特にリズムとかに関して、クリス・ベアと僕とでよくそういう話をしてたしね。もともとその手の音楽がみんなすごく好きなんだよ――4人ともビヨンセとかジャスティン・ティンバーレイクとかR・ケリーが大好きだし、たぶんそのへんの影響はかなり音にも表れてるんじゃないかな……実際、今回初めて影響を受けたって言っていいと思うよ。『イエロー・ハウス』では、そういったものからの影響はほとんど見られないと思うしね。だからそのへんが前のアルバムとは違ってるかな。今回はリズムと音の鮮明さにより重きを置いてて、ヴォーカルとドラムが中心的な存在になってるしね」
エド「あと、よりメリハリのあるサウンドになってると思うよ」
●『ヴェッカーティメスト』には、ライヴでやるのに非常に適した曲が多く収められているように思いましたが、今作の曲のライヴでの演奏に関しては、どのように感じていますか? 以前のアルバムからのライヴと比べて、何か違いを感じたりとか。
クリス「まず、ラウドな曲が増えたね。『イエロー・ハウス』は全体的にもっとおとなしいというか、抑制された感じだったけど……」
エド「今回の曲は、もっとハードにロックすることができるんだ。全体的にはやっぱりミッドテンポな曲がほとんどなんだけど、でも新しい曲をライヴでやるのは楽しいよ。ステージ用に曲を作り直す作業って、いつやってもワクワクするしね。僕たち4人しかいないから、アルバムの音をそのままステージで再現するのって結構骨が折れるんだよ。アルバムは音を何層にも重ねて作ってるからね。でもこうしてツアーをしている最中も曲はどんどん進化していってるし、実際ステージで演奏するたびによくなってるし、新しい発見が必ずあるんだ」
●オーディエンスの反応も、前のアルバムでのライヴのときとは違っていますか?
エド「まあ……ふふ、一番違うのは、お客さんの数がうんと増えたってことと、あと今のほうがみんな曲をよく知ってくれてるってことだね」
クリス「あと、お客さんがよく動くようになったっていうのかな。演奏中に、みんなの頭が前よりよく動いてるように思うんだよ。昔はリズム的な要素がほとんどないソフトな曲をよくやってたけど、最近の曲はリズムを前面に出してるからだろうね。だからそこはちょっと自分としても嬉しいかな」
●ところで、“トゥー・ウィークス”のヴィデオについて伺いたいんですが(笑)。
エド「アハハハ」
●(笑)、実はあのヴィデオは、グリズリー・ベアのことはもちろん音楽について全然知らないような、変わった映像を集めるのが趣味な人たちの間でもひそかな話題になっていたりしまして……。
クリス「ホント?」
●ええ(笑)。
エド「ウェブサイトとかで見てってこと?」
●そうなんです。
クリス「おもしろいね」
エド「目をギョロギョロさせてたり頭が爆発したり、っていうのを見て?(笑)」
●そうそう。周りでの反応はいかがですか?
エド「あの手の変てこヴィデオって、すごく気に入るかそれとも理解できなくてウンザリするかのどっちかなんだよね。でもいずれにしても記憶に残るヴィデオだっていうのがすごいところで、気に入ろうが気に入るまいがしっかり脳裏に焼きついてしまうんだよ。僕は最後の爆発のところがやっぱり気に入ってるよ。みんな別人みたいっていうか不気味な顔してて、変なまばたきしたり光を発し始めたり……。でもそれは嬉しいな。日本であのヴィデオがそんなに認知されてるなんて、知らなかったよ。ネットで見てるってことなんだよね?」
●まあ、ユーチューブですよね(笑)。
エド「だよね(笑)」
●あのヴィデオには何かテーマがあったりするんでしょうか? というのも、僕はあのヴィデオを観て、クローネンバーグ監督の映画『スキャナーズ』を思い出したんです。
エド「あぁ~(笑)、なるほどね。あのヴィデオは、ヤー・ヤー・ヤーズやファイストやライアーズのヴィデオも手がけてるパトリック・ドーターズが監督してて、最初にヴィデオのアイディアを持って来てくれたときから基本的に、パトリックのアイディアをもとに撮影を進めていったんだ。彼としてはいびつな喜びっていうか、ハッピーなんだけど薄気味悪い、そんな雰囲気を出したかったらしいよ。そういうわけで、ああいう映像コンセプトを思いついたのは全部パトリックだったから、僕が全部代弁することもできないんだよね」
●なるほど、そうだったんですね。では、秋にはヨーロッパを回られるそうですが。
エド「この後もすぐ行くんだけどそれはフェスのためで、1ヶ月間ほどいろんなフェスに出る予定なんだ。で、秋に改めて、ロンドン公共楽団との共演やクラブ・ライヴをやりに戻ることになってるんだ」
●どんなフェスに出るんですか?
エド「この後まずノルウェーのオヤ・フェスティヴァルに出て、それからスウェーデンやドイツのフェスにも出て――多分名前を言ってもわかんないと思うけど(笑)、全部で8つのフェスに出ることになってるんだ」
●今後のライヴでの新たなプランは?
クリス「ライティングの部分をもっと凝ってみようと思ってるんだ。すごく斬新できれいでおもしろいものになるんじゃないかな」
エド「あと、アメリカでビーチ・ハウスと一緒に回ることになってるんだ。彼女(ヴィクトリア)は“トゥー・ウィークス”のバックでも歌ってくれてるから、あの曲は毎晩彼女とのジョイントになるんじゃないかな。あと、ニューヨークでの弦楽四重奏団や合唱団との共演みたいに、時にはその土地ならではの演出を加えて、スペシャルなショウにしたいと思ってるよ」
●ニューヨークといえば、最近フリー・フェスティヴァルが盛んですよね。
エド「そうそう、今度僕らも出るウィリアムズバーグ・ウォーターフロントみたいなイヴェントのことだよね」
●そうそう。いいですよね。
クリス「うん、最高だよ。水上の素晴らしいセッティングでみんなに新しい音楽に触れてもらえる、絶好のチャンスだと思う。普段お金を払ってまで聴こうとは思わないような音楽でも、無料だったら興味がわいてチェックしようかなって思ってもらえるかもしれないからね。たとえばディアハンターもこないだやったばかりだし、あとダーティ・プロジェクターズとかガール・トークとか、みんなこぞって出演してるんだよね。僕らも8月の末に出るんだけど、きっとすごく楽しいショウになると思うよ」
●おおー。では、バンドとしての今後の目標について聞かせてもらえますか?
クリス「これからしばらくはツアー生活が続くかなあ。来年の2月くらいまでずっとね」
エド「僕としてはとにかく音楽を作り続けたい」
クリス「あと、新しいアルバムを作るのも今から楽しみだよ。実際今回のアルバムを作り終えた途端に、もう次のアルバムが作りたいって思ってたんだよね。だから、まあわかんないけど、来年の春くらいには次のアルバムを作っていたいかな。とにかくもっとたくさん音楽が作りたくてたまらないんだ。で、できればまた日本に戻ってきて、フェスティヴァルじゃない単独のライヴをやれたら楽しいだろうな」
エド「マリーン・ステージに立つのが最終目標(笑)」
クリス「アハハハ」
エド「冗談だよ、冗談!」
●(笑)。単独の折には、ぜひニューヨークのバンドを連れてきてください。
エド「うんうん、そのときはかっこいい新人バンドを一緒に連れてくるよ。ビーチ・ハウスとかね。もう日本には来たことがあるのかな……多分まだだよね」
●そうですね、日本盤もまだなので……。
クリス「そうなんだ」
2012年10月3日水曜日
2012年10月のカセット・レヴュー(随時更新予定)
◎Rayon Beach/This Looks Serious
オースティンのトリオ。オーシーズとクロコダイルズの合いの子のようなピュア・サイケ・ガレージ・ロックンロール。鬱屈としたところがなく溌剌としていて誰からも好まれそう。高音のファズ・ギターと裏声のようなコーラスが、やや頭悪そうで可愛げあり。
◎Mpala Garoo/Ou Du Monde
Kon Tiki GeminiやSunbells Fennimoreとしても活動するモスクワのソロ・プロジェクト。川底を小石が叩くようなウェットなヴァイブ。プリズミックな光彩を放つシンセ・アンビエント。さしずめ初夏の小川で聴くアニマル・コレクティヴ『Campfire Songs』か。
◎Wolf Fluorescence/There is a Mirk Inside Here Which She Must Tint Brighter or Collapse
ドイツのエレクトロニクス。音自体というより音の周りの気配に耳を澄ますようなアンビエンス。「ディスクリート・ミュージック」のモードも。コラージュを交えつつ、薄皮で編まれたような繊細な音響のビブラートが心地よく。M. Geddes GengrasやQuiet EveningsもリリースするSicSicから。
◎Innercity/Another Hard New Age
ほんのりサイバーパンクな香りもするプロジェクト名といい、なんとも直截な作品タイトルがもう……。ベルギーのニューエイジ・プロジェクト。せせらぐエレクトロニクスと、うねるパルス音の波長。bandcampに無造作にUPされた音源のたたずまいがワーカホリック期のダニエル・ジョンストンを思わせて狂気、、
◎Cube/Bride of Walk man
素性不明。スクリューからMacintosh Plus風~Vaperwave(って最近呼ばれるヤツでしょうか)、ファンキー、ブラック・ノイズ、シンセ・ドローン……かと思いきや、タイ・ポップ~エスノ・ディスコがコラージュもろともドロドロと……掴みどころなく、捉えどころなし。とりあえずテープの収録時間に詰め込めるだけ詰め込んだような、脈絡なくスキゾなベッドルーム・エクスペリメンタル。
◎Élément Kuuda/Polargraph
カルフォルニアのChristian Richerによるソロ・プロジェクト。柔毛をなでるような電子音の細かな凹凸が重なり合い、なだらかな稜線のサウンドスケープを描く。優雅なるニューエイジ・ソニック・トリップ。Dry ValleysやHobo CubesもリリースするSacred Phrasesから。
◎The Savage Young Taterbug/Theme For Gasoline Weirdo
愛すべき……というかラヴリーすぎるホームメイド・ジャンク・ポップ。ヒプナゴジアなんて物々しい呼び名より子守唄のほうがぴったり。初期ベックからジェームズ・フェラーロを結ぶ導線上からこぼれ落ちた異形のピュアネス。おなじみNight Peopleから。
◎Berlenga/
Europa Rural/split
マニュエル・ゲッチング~マーク・マッガイアー~ダスティン・ウォン風のレイヤード・ギター・アンビエントをたなびかせる前者。ボンゴ・ビートにシンセ&ギター・ドローンをからませトライバルな熱気を放射冷却する後者。俯瞰で見れば同じ領土の人種だが嗜好も衣食住も異なる好スプリット。プーチンとイルカとキャメロン・ディアスが目印のExo Tapesから。
◎ANDY ORTMANN/OCCULTRONICS
Nihilistを主宰するAOがBeniffer Editionsからリリース。作品タイトルや曲名からしてさもありなんな、陰鬱で雑音に満ちたエレクトロニクス&コラージュはまるでチャネリングや降霊術の記録を思わせる。オヴァルのネガというか、No Fun系のテイストもちらほら。
◎Reighnbeau/Ashes
物憂げなアルペジオとサッドコア~スロウコアなアンサンブルにのせたマーク・コズレク系の枯淡の歌。裏アメリカーナと思いきや先入観を排せばしっとりとした歌ものとして堪能できる。要注目のKevin Greenspon(※クラウド・ナッシングスとのスプリットCSもよかった)もリリースするBridgetownから。
◎CARLTON MELTON/aQ Hits
サンフランシスコのスペース・サイケ・ロッカー。ねっとり練り上げたクラウトロッキンなジャムにブギーを吹かせたギター・ソロがもうもうと揺らめく。同郷のウッデン・シップスらと同じ穴のムジナである、カンとブルー・チアーの子供。
◎Eagle Altar/Cut America
名門Digitalisを運営するブラッド&エデン・ローズ夫妻のデュオ。「アメリカを切り取る」……同郷タルサを舞台に50年代アメリカの荒廃を活写したラリー・クラークの写真集も連想させるタイトルだが、オブスキュアな音響を束ねたドローン・アンビエントは幻想的で夢うつつな輝きを放つ。motion sickness of time travelと描き出すものは近いが、ノスタルジックであまやかな「travel」は追憶するような時間感覚をもたらす。
◎The Accidents/Demo Color
クリーヴランドの新人らしい2人組。エメラルズをあわーく引き伸ばしたような明媚なシンセ・アンビエンス。具体音やサンプリングも織り込みアヴァンな演出・展開も見せるが、魅力はメディテーションを深めたドゥルッティ・コラムを思わせる澄んだ音響の気配。……ところでこの界隈の作品よく使われる「sci-fi」というタームだが、その捉え方というか意味合いがいまいちわからず。「vaporwave」的なものとの近似性もあるのだろうか。
◎TAIYOUTOU/Japan and Japanese
ご存知、吟醸派の顔役的なユニット。「大阪万博の各パヴィリオンを音響化していく」ことがコンセプトとは、恥ずかしながら知らず聴いてました。。ゆったりと流れるシンセ・ドローンに鳥の鳴き声が響くM2“samidare”が和モダンなたおやかさも感じさせて秀逸。
◎Olympus Mons/Reflections of Bliss Lake
Sun Arawのバンド・メンバーも務めるAlex Grayが片割れのデュオ。シンセやハーモニウムが奏でるオーガニックなアンビエントに、繊細なギター・ワークのタッチがみずみずしさを添える。ドリーム・ポップ~アシッド・フォーキィなテイストは残響優美なディレイの賜物。deep tapesから。
◎Bad Chess/Untitled
レーベルいわく「実在しないAMラジオが奏でるリズミック・ソフト・テクノ……」云々。ブラスト・ビートのようなローファイ・ノイズで塗り込め、パルスの飛沫が音像の波形をかき乱す。Derek RogersもリリースするMoon Mist Musicから。
◎Salamander Wool/Espionage Briefcase
バルカン・フォーク、中東ダブ、ガムラン、スラッシュメタル、ミニマル・テクノ、コラージュ、ノイズ・コンクレート……エトセトラエトセトラ。収録時間いっぱいに圧縮&ペーストされた雑音(階)のアマルガム。
◎Western Standards/The Siren
本名をメジャー・E・ミラーという男のプロジェクト。現代音楽やミニマリストのヨーロッパ的美意識を感じさせるその奥深い音像は、端整に重ねられた環境音楽風のアンビエンスの先に、静けさを通り越し鋭敏に研ぎ澄まされた、静謐の極致を描き出す。リリース元はSweat Lodge Guruからで、Motion Sickness Of Time TravelやLee NobleやKon Tiki Geminiなど話題作多数。同じくアイオワに構えるNight Peopleとはやや毛色が異なる。
◎Raajmahal/S/T
ノー・ネック・ブルース・バンドのPat Muranoら含むサイケ・フォーク・トリオ。ハラランビデスのアンビエント・ヴァージョンのような風情もあるが、シルキーな音色のギター・ループ上に女性ヴォーカルを幾重にも重ねたスタイルはジュリアナ・バーウィックぽくもある。
◎Daniel (J D) Emmanuel/Echoes From Ancient Caves
オリジナルは30年以上前にリリースされた作品を、Sun ArawのレーベルSun Arkからリイシュー。ギターやシンセを重ねて編まれたニュー・エイジ・アンビエントはTerry RileyやPhilip Glassの流れを汲むミニマル~現代音楽の系譜を背景に華を咲かせたもので、アリス・コルトレーンをAOR化したようなスピリチュアルなチルアウトも。
◎Reedbeds/S/T
Hooker Visionからもリリースがあるサクラメントのアンビエント作家。A面は牧歌的な光が満たすギター・ミニマル。一転してB面ではディストーションも効かせたサイケ~ドローンを。ジャケのイメージといい、どこか色褪せたような音のテイストは不思議とボーズ・オブ・カナダを連想させる瞬間も。
(※2012年9月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年8月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年7月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年6月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年5月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年4月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年3月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年2月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年1月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)
(※極私的2010年代考(仮)……2010年夏の“彼女たち”について)
(※2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))