2013年2月8日金曜日
2013年2月のカセット・レヴュー(随時更新予定)
◎Motion Sickness Of Time Travel/A Marbled Youth
昨年も年間通じて繁忙期を過ごしたMSOTT。シンセ・アンビエントの代表的な女性作家となった彼女だけど、いずれクリスティーナ・カーターのような境地に行き着くのでは?とも思わせる近作とはやや趣の変えた一本。
◎Bernard Femminielli
/Telenovelas Mentales
アクトレスとドリップハウスを繋ぐニューエイジ・ハウス? ピート・スワンソあたりが引っ張るこの界隈の末席に着くであろう奇才で、シンセ・ポップとシンセ・アンビエント~ドローンのあいだを飄々と。 話は変わるが90年代にこのあたりのレトロ・フューチャーな感覚を掘り起こしたトランザムが近年ハードコアやノイズ~サイケの意匠をかりてUSアンダーグラウンドに接近を見せる傾向は個人的に興味深く観測している。
◎Ossining/Trike
“Happiness is the smell of a new car. It's freedom from fear. It's a billboard on the side of the road that screams reassurance that whatever you are doing is okay. You are okay. ” という矜持なのかコピーなのかが効いている。あわく引き延ばされたシンセ・アンビエンスの向こう側からうっすらと朧げながら歌声のようなものも聞こえてくる。ジュリアンナ・バーウィックのようなポリフォニーとは違うが、“It's freedom from fear”とも謳うある種の祈りにも似た瞑想も感じさせる。
◎Black Eagle Child/Two Moods
一頃のFonal周辺とも共鳴するフリー・フォークの流れを組みながら、昨今のモダン・アンビエントの潮流とも合流した多作極まるアメリカ人ギター奏者Michael Jantz。具体音を織り交ぜた饒舌かつインティメイトなアコースティック・エレクトロは、名前は思い出せないがシカゴ音響派の最良の果実や竹村延和との共通因子も頷わせる。
◎Le Révélateur/Horizon Fears
元GY!BE/フライ・パン・アムのロジャー・テリア‐クレイグによるソロ・プロジェクト。最近は映像作家の妻も参加しているとか。“日の出の恐怖”というタイトルが醸し出す通り、アニミスティックでニューエイジなアンビエント・ドローン・サイケ。ちなみに昨今モントリオールは地元密着のドローン・シーン/コミュニティが活発で、なかでもGY!BEのマウロ・ペッツェントが運営するライヴ・スペース兼ベジ食堂のDIYヴェニュー「Casa del Popolo」に集うミュージシャン・コレクティヴの動きには要注目。サンドリップスとかホボ・キューブスとか。余談だがその辺については近日リリースされるドルドラムズの国内盤ライナーノーツに話のイントロとして書きました。
◎Magneticring/City
カナダはヴァンクーヴァーのJoshua Stevensonによるソロ・プロジェクト。ムーグ・シンセがうねり倒すアップリフティングなジャーマン式ニューエイジ・テクノ。 Gift Tapes 038 から。
◎Sinner Jim Whitney/AM Thirty-Three Thirty
異能のテープ・マニュピレイター。無調のThe Caretakerか、はたまた意識混濁したイシマルーか。退廃的なアナログ使いがダーク・ゴシックに限りなく漸近。
◎The Kevin Costner Suicide Pact/My Hand Holding a Still Photograph of the Same Scene
コロラドの4人組。具体音やサンプルを丁寧に重ね、うっとりと棚引くアンビエント~シンセ・ドローン。この手の部類ではオーソドックスなスタイルといえるが、これを4人でやっているというのは意外に珍しいかも。Hooker Visonから。
◎G. Sweems / Tricorn & Queue/Split
波の音や鳥のさえずり……といったフィールド・レコーディングスとエレクトロニクスを織り交ぜ、ノスタルジックなオルゴールを手回しするような前者。多作を誇るJeff AstinとKane Pourによる後者は、様々なシークエンスがクロスフェードを見せるドリーミーなシンセ・アンビエント。 housecraft,から。
◎Günter Schlienz/Tape Studies
モジュラー・シンセのやわらかで静謐な音色が癒しのドリップを誘う。古き良きニューエイジが夢見たコズミック・アンビエント。 基盤を模したアートワークはアナログ回帰への郷愁か。
◎Ocular Gymnastics/Vol. 1
トニー・コンラッドとZsによるアブストラクトなライヴ・セッションか。極楽鳥のようなラッパ、祭儀を飾る鐘、ドローンとミュージック・コンクレート、ニューエイジとトライバルの止揚……奇想に満ちた“音景”が立ち現われては消え、異様な聴後感を聴き手に残す。現時点で今年随一の奇盤、いや奇テープ。
◎Floating Gardens / Slag Heap/Split
シカゴのField Studiesから。 素性謎多きPopol Vuhの正嫡子とシカゴの鍵盤ドローン奏者によるスプリット。しかし……この界隈が採掘を続ける化石燃料の尽きることのなさといとたら!
◎Ralph White/Atavistic Pillow
正しくフリー・フォーキーな……といったら語弊があるか。テキサスで真夜中の星空の下、録音されたとかいう本作。カリンバやバンジョー、フィドルをポロポロと。砂漠のニック・カストロか。
◎Nite Lite/Marlene
Super Mineralsの片割れにしてMagic Lanternの一員であるPhil FrenchとMyste Frenchのプロジェクト。世界の片隅で採取蒐集したフィールド・レコーディングスをコラージュしたモダン・アニミズムのタペストリー。 リリースは2人が運営するStunned Recordsから。
◎Aphid Palisades/III
SundripsとBelariskの合体デュオ。シンセ・ドローンとノイズの濃霧の中、視界を探りながら当てどなく彷徨うような……景色は異なるがガス・ヴァン・サントの映画『ジュリー』を思わせるタクラマカン(=生きては戻れぬ……)的体験。Hooker Visionから。
(※2013年1月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
(※2012年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
(※2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))
(※極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)
(※極私的2010年代考(仮)……2010年夏の“彼女たち”について)
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