今年も〈Opal Tapes〉は緊張感を持続したまま走り抜けた。新鮮味こそ薄らいだが。イタリアのインダストリアル・ダブ。ビート寄りもシンセの比重が大きめ。というかビートはかなりアブストラクト。初期アシッドハウスの狂った感覚を現今のポスト・インダストリアル以降に流し込んだような。
今年も〈Tesla Tapes〉は……然り。オーストラリアの男子2人組。レーベル・カラーとはやや趣の異なる、なるほどデペッシュ・モード風というか80年代~初期〈4AD〉を彷彿させるダーク・シンセ・ポップ。リリース自体は提携レーベルの〈the OnO〉から。
〈1080p〉も今年を象徴する……は言わずもがなでしょう。「オンライン云々」以降の混沌とした文脈をいい意味で濾過し、けれどスタイリッシュ&フレッシュな作家性を発露させるローファイ・シンセ・ミュージック。衒いや隠し立ての一切ないダンス・フィールに南半球~ニュージーランドらしい大味な魅力が。一時期の〈100%Silk〉の役割を今の〈1080p〉は担っているよう。
ある種の“旗艦”的な役割をゆっくりと終えつつあるような……近年の〈Not Not Fun〉に対する偽らざる印象はそれ。作品のクオリティが落ちていることはないが、テンションは停滞気味のような気も。LAのデュオによる仕業は、アンビエント&ダウンビートの彼方にシャーデーの唸りを召喚させるような瞬間も。
◎Klondike/AFRICA to MIDI
モントリオールの〈Jeunesse Cosmique〉と言えばCosì e Cosìの全裸ポートレイトジャケでお馴染みだけど、いまいち正体が掴みづらいレーベルのひとつ。タイトルが示す通り、非西洋音楽への何かしらの応答/参照が窺えるミニマルなエレクトロニック・ミュージックではあるが、リンガラ音楽っぽい節回しや打楽器/パーカッシヴな音色使いにそれらしさを窺わせつつも、トイトロニカからドリーミーっぽさやチャイルディッシュな感覚を抜いた至極アウトサイダーな空恐ろしさをたたえている。
◎Yves Malone/Ebony Sunrise
活発なリリースが続いた〈Orange Milk〉から。衒いのないロービットのシンセ・チューンだが、数年来例えば〈Death Waltz〉が進めてきたジョン・カーペンター映画のサントラ再発の延長線上にあることを意識させる意匠が随所に。周辺の動向には来年も引き続き注視が。
◎Nick Storring/Endless Conjecture
同じくオハイオの〈みかん牛乳〉より。ベルなどの生楽器も交えたアミニスティックなサウンドスケープはフリークフォークの匂いもそこはかとなく漂い、例えばアニマル・コレクティヴ『Campfire Songs』の陽炎のような揺らぎをフィールド・レコーディングスの上に影絵のように重ね写したような感覚。
◎FLUORESCENT HEIGHTS/RELAXING IN THE NEW WORLD
〈BEER ON THE RUG〉も粘り強くリリースを続けている「オンライン云々」以降のレーベルのひとつだろう。ここではビーチとニューエイジのイメージが重ね合わされている。つまり2010年代以降のインディ・ミュージックとオンライン・アンダーグラウンド・パンクの意匠が。とも。北欧ストックホルムで思い描かれたそれが。音自体はありふれたシンセ・アンビエントの域を出ていないけれども。
◎AU+/AU+ EMILY EP
イタリアの〈Minimal Trend〉から。初期のEMAやゾラ・ジーザスも彷彿させるインダストリアル&ポエトリー・リーディング風。ミニマル・テクノやインプロヴィゼーション~ノイズも織り交ぜつつ、たとえばPharmakonが突き抜け焼き払った荒地から仕切り直しをするような、不思議な瑞々しさも。
◎Magic Fades/Push Thru
ヴァンクーヴァーの〈1080p〉から。Mike GrabarekとJeremy Scotのデュオによる、t今年のベスト・リストの上位にを占めること必至の一本。玉石混交のプロダクティヴなインディR&B群の中に置かれても光り輝く才能を感じさせること間違いなく、官能的でメロドラマチック、Sci-Fiでアンビエント、何よりポップな……オンライン・ミュージック以降の文脈の集約点でありその美学的なイメージをヴィジュアライズさせたアートワークも素晴らしい。
◎B L A C K I E... All Caps, With Spaces/IMAGINE YOUR SELF IN A FREE AND NATURAL WORLD
ピッチフォークやTMTも唾をつけたヒューストン鬼才。乱暴に言えばフリー・ジャズとデス・グリップスの混交。あるいはラン・ザ・ジュエルズ・ミーツ・ジーズ? ラップ寄りだった前作『FUCK THE FALSE』も。
◎Ratkiller/On Emotional Surface
カリフォルニアのアンビエント作家。ベッドルーム音楽の夢想空想をミニマルなファンク・トーンに散りばめユーモアで糊塗した、30分弱にわたるブレイン・ウォッシング。エスノ趣味をオノマトペで微分したような惚け気味のガラクタ感が耳愉しい。
◎Khotin/Hello World
モントリオールが〈Arbutus〉ならヴァンクーヴァーは〈1080p〉。シルキーというよりアーバンという形容も相応しいシンセ・ハウス。本人はチャイルディッシュなベッドルーム・ポップを意識したそうだが、時折挿し込まれる子供の声やサンプリングを除けば、少なくともローファイとは無縁なくらい音色の隅々まで磨き込まれた印象を。
◎OOBE/Digitalisea
イタリアの電子音楽家。〈1080p〉のカラーから緩めのエレクトロを予想したら思いの外ハードな手触りで驚き。聞けば過去に〈Opal Tapes〉からのリリースもあるそうで、さもあり何というか。たとえばHuerco S.にも通じるインダストリアルな感覚、Sci-Fiなイメージとか、この界隈はまったくもう。
◎nima/bay connected
オークランドのベッドルーム・アンビエンス。サンプルとループで作り上げるタイニーな箱庭。毛布をかぶって取り交わされるひそひそ話のよう。できるだけヴォリュームを絞って。
◎SEEKERSINTERNATIONAL/Reconsiders The Vampire's Curse
新作かと思ったらリプレス。ダブ&スクラッチ&チョップ&サンプリング。たとえば最近のますます“本格派”然としていくサン・アロウとは対照的に、相変わらずどこかふざけた調子を醸し出すところがチャーミングポイント。フル・アルバムの新作が待ち遠しい。
◎PHORK/Psychic Biomes
〈NNA〉や〈Opal Tapes〉〈Noumenal Loom〉からのリリースでお馴染み。そっけないトラックリストよろしく、無機質にウェイヴするパルス音。インダストリアルでミニマルなアンビエンスの狭間に、しかしスクリューを効かせたダンスフィールを忍び込ませたりと、なかなか気を許させない。
◎Blackfire/The Pain and the Swarm
オーストラリアはメルボルンの〈rocket machine〉から。正統派のダーク・アンビエントというか、インダストリアルで、ほのかにゴシック。蝶や蛾の標本があしらわれたアートワークが気分。サイコ・ホラーな無調。
◎Mike Simonetti/At the Juncture of Dark & Light Vol.4
アトランタの〈 Harsh Riddims Blood Sucking Cassette Co.〉から。〈Opal Tapes〉からリリースされたシリーズ3作目に続く最新のミックステープ(?)。デムダイク・ステアにも通じるマカロニ・ホラー的なゴシック~インダストリアルが際立った前作に比べると、ギターの不協和音が通底するA面はどこかノー・ウェイヴ風。B面はニューエイジっぽいシンセ・アンビエントが荒涼と(けれどファンキーなベースがシンコペイトする摩訶不思議な)。
(※2014年11月のカセット・レヴュー)
(※2014年10月のカセット・レヴュー)
(※2014年9月のカセット・レヴュー)
(※2014年8月のカセット・レヴュー)
(※2014年7月のカセット・レヴュー)
◎Klondike/AFRICA to MIDI
モントリオールの〈Jeunesse Cosmique〉と言えばCosì e Cosìの全裸ポートレイトジャケでお馴染みだけど、いまいち正体が掴みづらいレーベルのひとつ。タイトルが示す通り、非西洋音楽への何かしらの応答/参照が窺えるミニマルなエレクトロニック・ミュージックではあるが、リンガラ音楽っぽい節回しや打楽器/パーカッシヴな音色使いにそれらしさを窺わせつつも、トイトロニカからドリーミーっぽさやチャイルディッシュな感覚を抜いた至極アウトサイダーな空恐ろしさをたたえている。
◎Yves Malone/Ebony Sunrise
活発なリリースが続いた〈Orange Milk〉から。衒いのないロービットのシンセ・チューンだが、数年来例えば〈Death Waltz〉が進めてきたジョン・カーペンター映画のサントラ再発の延長線上にあることを意識させる意匠が随所に。周辺の動向には来年も引き続き注視が。
◎Nick Storring/Endless Conjecture
同じくオハイオの〈みかん牛乳〉より。ベルなどの生楽器も交えたアミニスティックなサウンドスケープはフリークフォークの匂いもそこはかとなく漂い、例えばアニマル・コレクティヴ『Campfire Songs』の陽炎のような揺らぎをフィールド・レコーディングスの上に影絵のように重ね写したような感覚。
◎FLUORESCENT HEIGHTS/RELAXING IN THE NEW WORLD
〈BEER ON THE RUG〉も粘り強くリリースを続けている「オンライン云々」以降のレーベルのひとつだろう。ここではビーチとニューエイジのイメージが重ね合わされている。つまり2010年代以降のインディ・ミュージックとオンライン・アンダーグラウンド・パンクの意匠が。とも。北欧ストックホルムで思い描かれたそれが。音自体はありふれたシンセ・アンビエントの域を出ていないけれども。
◎AU+/AU+ EMILY EP
イタリアの〈Minimal Trend〉から。初期のEMAやゾラ・ジーザスも彷彿させるインダストリアル&ポエトリー・リーディング風。ミニマル・テクノやインプロヴィゼーション~ノイズも織り交ぜつつ、たとえばPharmakonが突き抜け焼き払った荒地から仕切り直しをするような、不思議な瑞々しさも。
◎Magic Fades/Push Thru
ヴァンクーヴァーの〈1080p〉から。Mike GrabarekとJeremy Scotのデュオによる、t今年のベスト・リストの上位にを占めること必至の一本。玉石混交のプロダクティヴなインディR&B群の中に置かれても光り輝く才能を感じさせること間違いなく、官能的でメロドラマチック、Sci-Fiでアンビエント、何よりポップな……オンライン・ミュージック以降の文脈の集約点でありその美学的なイメージをヴィジュアライズさせたアートワークも素晴らしい。
◎B L A C K I E... All Caps, With Spaces/IMAGINE YOUR SELF IN A FREE AND NATURAL WORLD
ピッチフォークやTMTも唾をつけたヒューストン鬼才。乱暴に言えばフリー・ジャズとデス・グリップスの混交。あるいはラン・ザ・ジュエルズ・ミーツ・ジーズ? ラップ寄りだった前作『FUCK THE FALSE』も。
◎Ratkiller/On Emotional Surface
カリフォルニアのアンビエント作家。ベッドルーム音楽の夢想空想をミニマルなファンク・トーンに散りばめユーモアで糊塗した、30分弱にわたるブレイン・ウォッシング。エスノ趣味をオノマトペで微分したような惚け気味のガラクタ感が耳愉しい。
◎Khotin/Hello World
モントリオールが〈Arbutus〉ならヴァンクーヴァーは〈1080p〉。シルキーというよりアーバンという形容も相応しいシンセ・ハウス。本人はチャイルディッシュなベッドルーム・ポップを意識したそうだが、時折挿し込まれる子供の声やサンプリングを除けば、少なくともローファイとは無縁なくらい音色の隅々まで磨き込まれた印象を。
◎OOBE/Digitalisea
イタリアの電子音楽家。〈1080p〉のカラーから緩めのエレクトロを予想したら思いの外ハードな手触りで驚き。聞けば過去に〈Opal Tapes〉からのリリースもあるそうで、さもあり何というか。たとえばHuerco S.にも通じるインダストリアルな感覚、Sci-Fiなイメージとか、この界隈はまったくもう。
◎nima/bay connected
オークランドのベッドルーム・アンビエンス。サンプルとループで作り上げるタイニーな箱庭。毛布をかぶって取り交わされるひそひそ話のよう。できるだけヴォリュームを絞って。
◎SEEKERSINTERNATIONAL/Reconsiders The Vampire's Curse
新作かと思ったらリプレス。ダブ&スクラッチ&チョップ&サンプリング。たとえば最近のますます“本格派”然としていくサン・アロウとは対照的に、相変わらずどこかふざけた調子を醸し出すところがチャーミングポイント。フル・アルバムの新作が待ち遠しい。
◎PHORK/Psychic Biomes
〈NNA〉や〈Opal Tapes〉〈Noumenal Loom〉からのリリースでお馴染み。そっけないトラックリストよろしく、無機質にウェイヴするパルス音。インダストリアルでミニマルなアンビエンスの狭間に、しかしスクリューを効かせたダンスフィールを忍び込ませたりと、なかなか気を許させない。
◎Blackfire/The Pain and the Swarm
オーストラリアはメルボルンの〈rocket machine〉から。正統派のダーク・アンビエントというか、インダストリアルで、ほのかにゴシック。蝶や蛾の標本があしらわれたアートワークが気分。サイコ・ホラーな無調。
◎Mike Simonetti/At the Juncture of Dark & Light Vol.4
アトランタの〈 Harsh Riddims Blood Sucking Cassette Co.〉から。〈Opal Tapes〉からリリースされたシリーズ3作目に続く最新のミックステープ(?)。デムダイク・ステアにも通じるマカロニ・ホラー的なゴシック~インダストリアルが際立った前作に比べると、ギターの不協和音が通底するA面はどこかノー・ウェイヴ風。B面はニューエイジっぽいシンセ・アンビエントが荒涼と(けれどファンキーなベースがシンコペイトする摩訶不思議な)。
(※2014年11月のカセット・レヴュー)
(※2014年10月のカセット・レヴュー)
(※2014年9月のカセット・レヴュー)
(※2014年8月のカセット・レヴュー)
(※2014年7月のカセット・レヴュー)
(※2014年6月のカセット・レヴュー)
(※2014年5月のカセット・レヴュー)
(※2014年4月のカセット・レヴュー)
(※2014年3月のカセット・レヴュー)
(※2014年2月のカセット・レヴュー)
(※2014年1月のカセット・レヴュー)
(※2013年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
(※2012年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
(※2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))
(※極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)
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