2014年10月12日日曜日

2014年10月のカセット・レヴュー(随時更新予定)

◎Beachers/Pretend
UKのエレクトロニック音楽家Daryl Worthingtonによるプロジェクト。
シリアル番号が打たれたような無機質なトラック名が象徴的だが、しかし進むうちにダークなミニマル・テクノは流体のアンビエントへと色味と軟度をわずかに増していく模様。やはり彩度は低めだが、確かなグラデーションも感じられ、昨今のUKアンダーグラウンドのダウス・ミュージック勢と通底したコアな印象に同時代性を。

◎Yung AOL/Swim Team Kush
ブルックリンの〈Astro Nautico〉から。ポルノ・ヴィデオのサンプリングも忍ばせたダーティでドープなトラック集。高音のヴォーカル・チョップを聴くとPC Music周りを連想してしまうのは、ある意味で耳が毒されてしまっているからで、この確信犯的にオールドスクールな振る舞いも併せて、2000年代初頭あたりの西海岸のヒップホップ周りの音源を今一度再点検してもよさそうな。



◎LXV/Spectral Playmate
最近公開されたOPNのショーの映像を見て、やはりあのスクリーンに映る映像は圧巻だったなと。今ではOPNの名前を見かけるだけであのグロテスクな半獣半機(?)なクリーチャーを思い浮かべてしまうわけで、要は、このさき音楽はあの映像を喚起させることができるか。そういう意味では、LXVはかなりいい線行っていると思う。いや、かなりの線を。偏執的なデジタルシンセとサンプリング、木霊するヴォイスの断片とフィールド・レコーディングス、過度なプロセシングが澱のように鼓膜に堆積し、その重みが脳幹にも達して感じられそう。〈Sacred Phrases〉から。

◎ANDY BOAY/In The Light
ご存知Tonstartssbandhtの片割れ。同じく〈Arbutus〉の看板ショーン・ニコラス・サヴェージをさらに半音上げたような、強烈ファンキー&サイケ、なのにそこはかとなくブリージンなローテク・オペラ。薄っぺらなギターが唸り、不気味なアンビエンスが水蒸気のように漂う。

◎L.V. Morris/Southern Victoria
太っ腹Charlatanでお馴染みオーストラリアはメルボルンの〈Rocket Machine〉から。湖面を騒がす羽虫の音のようなフィールド・レーディングスから、刹那、不穏なドローンやハーシュ・ノイズがむんずとせり上がる。水質汚染、異常気象、ざわめく木々、、、まるで黒沢清の『カリスマ』を聴いているよう。



◎D. Tiffany/s/t
個人的にいまいちレーベルとしての嗜好が掴み難いヴァンクーヴァーの〈1080p〉から。序盤のローテクなシンセ・ディスコ~テクノに〈100% Silk〉的な懐かしさも覚えつつ、やおらインダストリアル~ダーク・アンビエントな趣向を増す中盤以降の展開に、へぇ~、っと。

◎Ter(r)a & Lazy Magnet/split
デトロイトとチャペル・ヒルのトラック・メイカー両名によるテクノ~ハウス・スプリット。 Lazy Magnetの、ヒス・ノイズの上から叩きつけるようなベース音がインダストリアルな意匠も滲ませて好印象。

◎Panabrite/Tracer EP
〈Bathetic〉からリリースされたカセット・セットの中の一本。量が質を生む。複数の名義を持つNorm Chambersもそんな一人に間違いなく、しかもこれだけテンションを維持しながらリリースを継続する姿勢に。トラック・タイトルに示されたコンセプチュアルな音の造形。




2014年9月のカセット・レヴュー)
2014年8月のカセット・レヴュー)
2014年7月のカセット・レヴュー)
2014年6月のカセット・レヴュー)
2014年5月のカセット・レヴュー)
2014年4月のカセット・レヴュー)
2014年3月のカセット・レヴュー)
2014年2月のカセット・レヴュー)
2014年1月のカセット・レヴュー)
2013年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
2012年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))
極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)

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