2013年8月2日金曜日

2013年8月のカセット・レヴュー(随時更新予定)

◎Esmeralda Blanca/Cometa Cristal
チリのアコースティック・デュオ。アニマル・コレウティヴの『サング・トングス』に通じるアンビエンタルなエレクトロニクスと生楽器の交配、あるいはジョアン・ジルベルトとホセ・ゴンザレスの共演……といったら褒めすぎか。オーガニックでサウダージ感溢れる音色と歌が酷暑が続く日々の中で一服の清涼を与えてくれる。ヴィオラの響きのなんと優雅で涼やかなことか。

◎Clime/Two Crests
先ごろBandcampをオープンさせた〈Space Slave〉から。片面40分強、両面併せて90分弱というヴォリューム。まるでチベットや奥モンゴル、東南アジアやアマゾン川流域辺りといった未開地の現地録音も思わせる瞑想度の高いインストゥルメンテーション。アート・ワークが想像させるそのままのサウンドスケープが視界一面に広がるよう。



◎Inez Lightfoot/Familiars
去年Digitalisからリリースされた一本。MSOTTスタイルの薄霧なアンビエントを下敷きに、Fonalのイスラヤとか少し前のグルーパーあたりのフリー・フォーク~ドローン・フォーク、コラージュなんかも塗り重ねたモダン・ミスティック音響……やはり、通して聴いてみて聴き手の耳がだいぶ慣れてしまったなーという感はぬぐえないが、それでもこれはこれで不朽のジャンル音楽という気も。

◎Reuben Sawyer/Constricting Realities
そんなDigitalisと双璧をなす勢いのConstellation Tatsuから。表情をあまり変えない、深海の静けさを思わせる幻想的なシンセ・ドローンが続くが、B面に入ると細かなギター・テクスチャーがせり出し、あるいはラスト・トラックではエレクトロニクスや具体の微音がざわめき立てる美しいサウンドスケープを創出。手のひらサイズに広がる、ささやかなイリュージョン。米オークランド発。

◎Howard Stelzer/The Impossible Astronaut
安心のNNAから。ボストンのヴェテランによる、ポスト・インダストリアルとも連帯を見せる漆黒のドローン。フィールドレコーディングスも織り交ぜたB面には、たとえばゴッドスピードの音楽に吹き荒れる黒い風を感じることができる。

◎Daniel Klag/Inner Earth
ブラック・フラッグを模したロゴが目を引く、ニューヨークのアンビエント作家。アートワークを飾る、静寂に包まれた湖面のイメージが印象的だが、黙想的という形容が相応しいシンセ・ドローンには一切の情緒を寄せ付けない厳しさを感じさせる。Constellation Tatsuからのリリースも。

◎Lou Breed/Stoned Out Two: Morning of the Way to Love
おそらくはルー・リードを意識した名前なのか、それとも本名なのかは謎。西海岸でよく見かけるタイプの宅録系シンガー・ソングライターというか、どうにも捻じれたポップ・センスは聴かずしてある程度のことは予想できたり…。ホロッとさせるようなソウル・ポップを聴かせたかと思えば、まんまVUの“アイル・ビー・ユア・ミラー”を彷彿させたり…どうにも食えない。

◎Eola/Ye
ショーン・ニコラス・サヴェージと並ぶ〈Arbutus〉の古株、Tonstartssbandhtの片割れによるソロ。ドゥーワップ・サイケというかダブ・ドゥーワップ/ゴスペルというか。たとえばパンダ・ベアが『パーソン・ピッチ』前に切っていたシングルに近いテイストも。やば。。

◎JOHN ZUMA ST. PELVYN/Lost Masters of the Shortwave Choir
James Blackshawも連想させるフィンガー・ピッキングの魔術師。ガムラン風の銅鑼やフルートが飾るフリー・フォーキィなインストゥルメンテーションは、ミネアポリスのPeltと呼びたい趣き。

◎Discipline/Hypnose
フランスはリヨンのドローン作家。両面・約45分ずつ収録された、息も詰まるような持続音による静寂。Sunny Dunesもリリースする〈Seconds Records〉から。



◎マクロスMACROSS 82-99/[夏日]
"Seapunk"とはなんぞや?と。NAVERまとめ程度の知識しかないのでよくわからないが、要するにジャック・ジョンソンがアコギをシンセに持ち替えてヒッピーみたいな派手な格好で演奏してるんだろう?と勝手に想像して試しに"Seapunk"とタグ付けされたものの中からこれを聴いてみたのだけど、まったく違っていて苦笑いしてしまった。。本作のほかにも適当にいろいろと聴いてみた雑感は、所謂これVaparwaveのサブ・ジャンルに位置するんじゃないというか、いや、そんなこと言い出したらチルウェイヴやウィッチハウスのサブ・ジャンルであり、シンセ・ウェイヴ、アシッドハウス……サブの、またサブの、またサブのサブの……という循環が一周回るどころかどこにも辿りつけぬまま放り出されてしまったような前後不覚に襲われそう。(→続く)

◎WΔll Flowers/Subliminal Romance Part II
(→続き)これとかもMacintosh Plusの『Floral shoppe』のあからさまオマージュなのかパロディみたいなアートワークも含めても、もう何もかもが懐かしい。懐かしさしかない。。いや、Vaparwaveこそガチでリアルに"レトロスペクティヴ"な音楽なんじゃないかと思う。

◎Stefan Blomeier and Claire/Worlds Beside Worlds
サイケデリックとハウスとアンビエントの交点から生まれた、今を象徴するスプリットCS。とくに後者はFeatureless Ghostの片割れ(?)Elise Tippinsによる新しいプロジェクトということで、ヴォーカルを揺らめかせた素敵女子のロマンチックなシンセ・ハウスを堪能でき〼。グラスゴーの〈Instructional Media〉から。

◎Guenter Schlienz/The Norman Tapes
コスミッシェ・ムジーク(宇宙音楽)を継承するデンマークのアンビエント作家。海岸や屋外で録音されたというモジュラー・シンセの発信音は、文字通り宇宙へと続く大いなる神秘の音色を奏で聴き手をどんぶらこ、どんぶらこ……と瞼の内側、意識の深く奥底へといざなう。ノルマンディーを離岸し、成層圏を抜けて、月の裏側へ…。。











2013年7月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
2013年6月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
2013年5月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
2013年4月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
2013年3月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
2013年2月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
2013年1月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
2012年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))
極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)
極私的2010年代考(仮)……2010年夏の“彼女たち”について)

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