◎Psychic Reality & Waxy Tombs/Anoarmholdyou/// New Realities
去年、あまたリリースされたLA吸血鬼ことアマンダ・ブラウンものの陰でリリースされた、Not Not Fun周辺の鬼才フィーメイル・アーティスト同士によるスプリット。シンセポップな前者は耳に聴き馴染みあるが、ループ&変調でかさぶたのようなグロテスクで色鮮やかなノイズ・アートをこしらえる後者に、くらくら、、
◎Leslie Keffer/Finally, Caves
ナッシュビルの女性ノイジシャン。彼女といえばハーシュでストイックなノイズのイメージが強いが、本作は、ある意味でダンス・ミュージック……あくまで彼女流だけど……でもある。埃臭いベースメントで木霊するインダストリアル・ディスコ。
◎Quiet Evenings / Former Selves/Riverbend/Future Nostalgia
Hooker Visionが誇る……リリースはconstellation tatsuからだけど……アンビエント~ドローンの両巨頭。 Rachel Evansの歌声や小鳥のさえずり等のフィールド・レコーディングスを、水彩画のような淡いタッチで溶かす前者。なるほど、“A perfect soundtrack for the final days of summer”と評されるのが相応しいスロウモーションなノスタルジアを喚起させる後者も、素晴らしい。
◎Nehal Shah/Neighbors
しーっ、というテープ・ヒスが岩に染み入るような静寂なるシンセ・アンビエント。暗黒の宇宙空間を滞留するテクノロジーの残骸。交信が切れて微量の電波を垂れ流し続ける人工衛星。
◎Kyle Bobby Dunn/Pour Les Octaves
ブルックリンのミニマリストによるデビュー作。イーノ『Another Green World』への応答を思わせる静謐なシンセ・アンビエント。テレンス・マリックの神話的な映像詩を思わせる。
◎Grapefruit/Twin Reflections
スペースメン3・ミーツ・ハルモニア、とも評される新人アンビエント作家。オルガン・シンセのニューエイジなドローンに導かれて、 霊感高き宇宙体験~深い瞑想にも似た境地へと沈降、そして浮遊を繰り返す、、
◎FEATURELESS GHOST/Biologically-Sound Cyber-Bodies
個々にも活動するアトランタのファンキー・シンセ・デュオ。ゲイリー・ニューマンとFront 242をコールドウェーブとグリッチでカスタマイズ、さらに100%Silkからリリースしたようなアンダーグラウンド・エレクトロ。
◎Melted Morton/Buddy Bolden's Blues b/w The Crave
要注目GnodやBear Bones, Lay LowもリリースするCabin Floor Esotericaから。 重ね録りのし過ぎか、伸びきったテープからもやもやと聞こえてくる戦前~ラグタイム・ブルースやピアノ室内楽の亡霊。古い蓄音機が奏でるように、エコーとノイズで滲んだ音像が魅惑的なモワレを描く。
◎Piotr Kurek/Edena
ポーランドのSangoplasmoから、ワルシャワのミニマリスト。シンセとサンプル、ミドル・イースタンな生楽器を交え、 テリー・ライリーの意匠をポスト・ニューエイジな現代サイケデリック・ミュージックの文脈に降霊させる。「Goddess Eye」のなんてサブライムな調べ!
◎APPALACHE/Sourire
パリ在住のJulien Magotによるソロ・プロジェクト。ダーティー・ビーチズがベトナムのクレオール様式の中庭でラリってるような、ぷかぷかとブルージーなエクトプラズムを吐き出している。
◎Mark Aubert/Party Cave
ベイエリアのトラックメイカー。スキゾフレニックに展開するブレイクビーツ&コラージュ。ジューク・ボックスを掻き回すようにモンドとクラウド・ラップとヴェイパーウェイヴの接合を試みる軽業師。
◎Albino Groupie/Psychographical Cross Section
デンマークのMikkel Dunkerleyによるソロ・プロジェクト。ナーコティックで瞑想的なシンセ・ドローン~アンビエントは代わり映えのない景色が続き、前後不覚のホワイトアウトを錯覚させるかのよう。アメリカ西海岸にサイケ&トリップの下地があるように、かの地もまた北欧神話に由来する神秘主義信仰的な土壌がアンダーグラウンドにはあるのだろうか。そういえばドゥンエンだって、、
◎Heart Museum/Warm Earth and Glowing Fingers
シンセとエレクトリック・ギター、そして泣き叫ぶ悲鳴を圧縮。ハーシュ・ノイズとドローンの黙示録的なシンフォニーは、まるで干ばつ地帯を吹き荒れる砂塵のよう。
◎Caboladies/Waterslide Mines
Oneohtrix Point Neverとのスプリットもある2人組。いわゆるアンビエント~ドローンでも、“エアリアル系”と“リキッド系”の2種類があるとすれば、こちらは後者。滴り落ちながらかたちを変え、砂漠に染みを広げるようなエレクトロニクス。塵というよりは泡のような感触のノイズで、やがて滝壺に飲み込まれていくようなクライマックスのサウンドスケープは壮観、いや快感。
◎Rogue Cop/Youre About As Romantic As A Pair Of Handcuffs
Drew Dahleなる素性不明のギター奏者。微分的なギター・インプロをつぎはぎし、幾何学的な歯ぎしりにも似た動作音が奏でるミニマル・ミュージック。どこか音効職人のような繊細な手業
◎A Snake In The Garden/Winter’s Burn
遠目で見ると一見、ダスティン・ウォンのカセット作品にも似たアートワークだが、当然ながら中身も何もかもが別物。失楽園をイメージさせる邪悪なネーミングの通りというか、ハーシュ~ドローニッシュなパワー・エレクトロニクスで押し通す力技は初級のウルフ・アイズにも通じる愚直さを。
◎Belarisk/On Amorphous Dawn
Oneohtrix Point NeverとのAstronaut名義でも知られるLee Tindallのプロジェクト。ニューエイジなアンビエンスの中にも初期エレクトロニカのチャイルディッシュな感覚が滲む、耳愉しく奇矯なトリップ音響。
◎UUUUUU/Untouched By Morning, Untouched By Noon
スコットランドのDerek McArthurによるソロ。トム・カーターやディーン・ロバーツといった、かつてのフリー・フォーク周辺も連想させる幽玄なギター・ドローン。視界の遠くでゆらめく蝋燭の炎を眺めるような感覚。
◎Former Selves/Limits
今やすっかり名を上げたカリフォルニアのPaul Skomsvoldによるプロジェクト。フィールド・レコーディングとテープ・コラージュを織り交ぜたヒプノティックなシンセ・アンビエント。雲隠れが続くボーズ・オブ・カナダの、あの美しくスロウモーションなノスタルジアをここに継承。
◎R. Franklin/Two Living Magnetic Pieces
Cabin Floor Esotericaはどうにも実態が掴みづらいレーベルのひとつ。アーティストの情報がよくわからず、作品も未開の現地録音か無縁仏の遺品のような代物が多く、、。それは本作も然りで、なんというか、「録れてしまった、、」みたいな忌々しさも漂うフィールド・レコーディングを夢想させる。
◎Grave Disgrace/s/t
近年ロシアでアンダーグラウンドなヒップホップやベッドルーム・ミュージックが盛り上がりを見せていることは日夜bandcampを徘徊している諸君等には承知のことと思うが、背景にはプッシー・ライオットの余波もあったりするのだろうか?ともあれ、 こちらは筋金入りのSludge/Doom/Stoner Metal。サバスやカイアス直系だが、言語がロシア語だとまたイントネーションが独得というか、北欧ブラック・メタルのような異教/異境感も。
◎Justin Marc Lloyd/Bottom Bog
Dementia and Hope TrailsやThe Human Excuse等々のプロジェクトも抱えるギーグ・ノイジシャン。カスタマイズを尽くしたイクエップメントを連結、海賊ラジオのようにならず者の信号&電波を発信。
◎Our Brother The Native/Rhythm Hymn
一頃はファットキャットからのリリースも。デビュー当初はフリー・フォークとの関連性を指摘されたり、またThe Books・ミーツ・Animal Collective『Sung Tongs』とも賛辞を受けたが、メンバー・チェンジを重ね、作品を重ねるはてに、落ち着くところに落ち着いたという感じ。シンセR&B~グリッチ・ポップな小技も使い分け、インティメイトでハンドメイドなポップソングを満喫している。
◎The Exhalers/Wave Reader II.O
イルカとプーチンでお馴染みExo Tapeから、João/Johnny名義で知られるポルトガルのアンビエント作家。三部作の二作目にあたり、Dolphins into the FutureやPanabrite好きを擽る、オシレーター使いもユニークな自然主義的で浮遊感覚溢れるサウンドスケープを描写。
◎Bil Vermette/untitled
70年代のシンセ・アンビエント作家によるアーカイブス。古色蒼然とした感もあるが、現代サイケデリック・ミュージックの尽きぬ滋養の一筋として、再訪する価値のあるクラシックス。
◎Haunted Houses/The Invisible War of the Mind
Ryan Lopilatoによる宅録アシッド・フォーク・プロジェクト。ギターを掻き毟り、4トラックに擦り付けるような荒々しいサウンド&歌唱は、オブスキュアな音像と相まって初期ベックとボニー・プリンス・ビリーとの混血児を思わせる。正直、最近のブラッドフォード・コックスなんかとは比べものにならないくらい、胸に迫るものが。 要注目のBatheticから。
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※2013年2月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
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※2013年1月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
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※2012年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
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※2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))
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※極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)
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※極私的2010年代考(仮)……2010年夏の“彼女たち”について)